魚の苦玉(にがだま)とは?正体は人間にもある臓器「胆のう」のこと!

魚介の雑学

魚を捌(さば)いてたら、中から緑色をした謎の物体が出てきました。

「なんだこれは・・・・。なぜ緑色??」

コショウダイから出てきた謎の緑色の物体。

コショウダイを捌いていたら緑色の物体が・・・・。

毒々しい色をした物体の正体は苦玉(にがだま)と呼ばれる魚の臓器で、人間でいう胆嚢(たんのう)のことです。

下の画像クリックでコショウダイから取り出した実際の苦玉を見ることができます(キモいので閲覧注意)。

魚が持つ苦玉とは、一体なんでしょうか?以下の点について調べてみました。

  • 苦玉の役割
  • 食べても大丈夫?
  • “栄養”と“毒”
  • 苦くて“緑色”なのはナゼ?
  • 潰してはいけない理由
  • 苦玉を持つ魚たち

の内臓の画像を載せてます。慣れてないと
だいぶキモいので苦手な人は見ないほうが良いです。

魚の「苦玉」とは?

魚の苦玉(にがだま)は人間で言えば胆のうのことで内臓の一種。魚の胆のうは特別に「苦玉」と呼びますが、逆に人間の胆のうはそう呼びません。「苦玉」という名前にはどんな意味があるのでしょうか?それは後述。

苦玉の役割

苦玉(胆のう)は簡単に言うと魚が食べたエサの消化を助ける役割があります。もう少し細かく言えば、肝臓で作った「胆汁」を濃縮して蓄えておく臓器が苦玉です。そして、腸に食べた物が入ってきた際には蓄えていた胆汁を分泌して消化を助けます。ちなみに人間の場合、胆のうは脂肪類の消化を助ける働きがあります。

魚の肝臓や雲子、卵巣などの内臓を珍味として食べる文化が日本にはありますが、では苦玉(胆嚢)は食べることができるのでしょうか?

魚の苦玉を食べることはできるのか

魚の胆のうをなぜ「苦玉(にがだま)」と呼ぶのか?それは食べると苦いからです。多くの場合は美味しくないので普通は食べないように取り除きます。古来より、アジアの一部地域で苦玉を薬や食材として食べる文化があるにはあったそうです。

しかし、珍味や漢方薬として利用されるケースがある一方、毒性を持つ魚種もいるし、またそうでなくても多量の摂食は避けるべき部位です。

あえて苦玉を食べる魚(鮎と秋刀魚)

焼いた鮎(アユ)秋刀魚(サンマ)を丸ごと食べたとき苦味を感じることがありますが、理由は苦玉を主とした内臓の風味によるもの。鮎をかじると微量ながら緑色の液体が見られることがあるのも、正体は胆汁(胆嚢から出る液体)です。

苦玉は基本的には食べませんが、丸ごと食べる小魚など苦味が気にならない場合や、味のアクセントとする場合に、苦玉をあえて除去せず食べることは多々あります。とりわけ鮎と秋刀魚が有名。でも実際は人により好みが分かれるところ。

コイやフグの苦玉を食べてはいけない

鯉料理の「鯉コク」などで有名な鯉(コイ)。食材として昔から親しまれてきた淡水性大型魚の苦玉には要注意です。鯉の苦玉を食べることで食中毒を引き起こす可能性があります

コイの苦玉に多量含まれる「シプリノール」という胆汁酸の一種は、研究で少なくとも小動物には毒のある成分だと分っていて、人間にも悪影響を及ぼすものだろうと目されています。

コイの苦玉による食中毒の症状は、下痢、嘔吐、腎不全、肝機能障害、痙攣、麻痺、意識不明など。日本国内で死亡例の報告は認められていないようですが、お隣りの中国では同じコイ科の別魚種で苦玉の摂食による死亡例が複数報告されているので、日本の鯉食も注意すべきです(参考:自然毒のリスクプロファイル[魚類][胆のう毒]【厚生労働省のホームページ】)。

またフグの場合は内臓の一部である苦玉は当然食べられません。内臓に猛毒のテトロドトキシンを含むからですね。コイは曖昧ですがフグの場合は食品衛生法で厳密に可食部位が定められており、苦玉を食べるのはNG。

また、他の魚の苦玉も食べるのには注意を要します。

苦玉の毒性と栄養

苦玉に限らず内臓全般に言えることですが、食べ物の不純物を除いたり消化のための特殊な成分を作ったりするなどの役割がある関係上、内臓を多量に食べてしまうと思わぬ食中毒のリスクに晒される可能性があります。ろ過した堆積物や、食べたものを分解する過程で発生した成分に毒が含まれやすいと言えば分かりやすいでしょうか。

特に大型の魚(長く生き老生した魚)の内臓は危険性が高い傾向があります。内臓に積年の毒素が蓄積している可能性が高いからです。

苦玉の栄養

食べてはいけないと紹介した「コイの苦玉」ですが、一方で「鯉担(りたん)」や「鯉魚担(りぎょたん)」と呼ばれ、昔から漢方薬とされてきたそうです。

滋養強壮、健胃効果、消化器系全般に良く、視力低下やかすみ目にまで効果アリと古来より謳われてきました。前述の中国でコイの仲間の苦玉を食べたことによる死亡例が複数あるのも、民間薬として使われてきたことの裏返しと言えるかもしれません。

毒と薬の違いは紙一重。苦玉を食べるのはリスクがあります。知識がない人は安易に食すべきではないでしょうし、コイの苦玉について厚生労働省のホームページによれば、中毒対策として「たとえ薬効があったとしても食べないこと」とハッキリ書かれています

苦玉はなぜ苦い?緑色のワケとは

魚の苦玉が苦い理由は、胆汁に含まれる成分によるもの。これは一括りに「胆汁酸」と言われたりします。

苦玉に前述した毒性があったり、あるいは薬に使われたりする理由もこの胆汁酸にあります。消化を助ける成分には毒性と薬効の2つの顔があるようです。しかし、繰り返しますが苦玉を食べることは避けたほうが良いでしょう。

苦玉の色が毒々しい「緑色」をしていることは、実は苦味とは関係ありません。苦玉が緑色なのはビリベルジン(biliverdin)という胆汁色素成分が含まれているから。色は黄色い場合もあります。また状態によって変色するので、魚が生きているときの苦玉はもっと鮮やかな色をしているかもしれません。

苦玉を潰してはいけない理由

苦玉は、魚を捌くときなど包丁などで間違って破かないように注意する必要があります。なぜなら、破いて胆汁が魚の身にかかろうものなら、苦味が身に着いてしまうから。胆汁が身につくと苦味を除きづらいとも言われまています。

・・・ですが、すぐに身から胆汁を洗い流せばセーフなことも多いです。実際に苦玉が破れてしまった魚の対処については後述。

魚には苦玉が発達した魚、そうでない魚が存在します。

一般的に、近海に住む根魚や岩礁域に定住している魚には、強烈な匂いの苦玉を持つ魚が多く、青魚や回遊する魚の苦玉は、ソフトなものが多いとされています。

苦玉が潰れてしまって身に緑色が移ってしまうことがありますが、苦玉の緑色は前述の通り「ビリベルジン」と呼ばれる胆汁色素の一種によるもの。この色素自体には毒性はないものの見た目が著しく悪いので苦味と相まって価値を毀損します。

苦玉を誤って潰してしまったら

潰してしまわぬよう注意をしていても、魚の臓器はとても繊細なのでふとした拍子に苦玉が傷つき破れてしまうこともあります。

また、野締めの魚(漁獲した後そのまま氷の中で死んだもの等)は雑に扱われたりして自然に苦玉が破れていることも多いです。

破れた苦玉に遭遇したら、すぐに流水で臓器ごと洗い流して綺麗にしましょう

また、身に緑色が移ってしまった時は該当箇所をそぎ取ればOKです。魚の身に苦味がうつると言われていますが、すぐに洗い落とすか、色がついた部位を削ぎとれば意外と大丈夫なことが多いです。

コロダイを捌いてみると、

自主規制の画像では、にが玉が破れてかなり混み入った状況になっており、慣れていないとパニックになりがち。

このケースでは、臓器をまるっとお腹から引っこ抜いて流水で洗い落とせば問題ありません。

身が破れて、可食部位が変色している場合はどうすれば良いでしょうか?

スズキの画像をご覧ください。(画像リンク先閲覧注意)

臓器を取り除いて三枚おろしにしたが、腹骨の膜まで胆液が染み付いている状態
腹骨と腹膜を削ぎ取っても、中の身まで胆液が染み込んでいる

ご覧のように、腹骨の膜の下まで色が変わっている場合もあります。

染み込んでいる身の部分を包丁で削ぎとれば大丈夫です。

ギリギリを削ぎとれば問題なし!

いろいろな魚の苦玉画像集

あらゆる魚に苦玉は存在すると書きましたので、魚たちが持っている苦玉画像をいくつか紹介します。キモいので苦手な人は注意!

ヒラメ

(筆者は見慣れてて何も感じませんが割と衝撃強めかもしれませんので、見たい方のみ、画像のリンクから閲覧してください。)

赤丸で囲んでいるのが苦玉です。他の臓器に混じって明らかに変な色の物体なのですぐにわかりますね。

マトウダイ

ヒラメに似て平べったい体をしたマトウダイ。

ヒラメとは全然違う種類の魚であれど、体の作りは似たり寄ったり。にが玉もしっかり持っています。

(画像リンク先に載せてます)

色はヒラメと同じで濃い緑色。

にが玉は色と形で多くの魚で共通しており、初めて解体する魚でも見分けることがしやすい臓器です。

マダラ

マダラは冬の鍋などに美味しい淡白な白身の魚。

白子や肝が美味ですが、肝は食べられません。

キモいのが大丈夫という方は画像クリックでご覧ください。

マダラの臓器はどれも大きく、苦玉もサイズ大きめ。

画像の中で、手前に見える白い雲のような臓器は「雲子」と呼ばれるマダラの白子。

クリーミーで美味しいと人気の高級食材です。

スズキ

釣りでも料理でも定番であるスズキ。

食用魚としての知名度が高いスズキも、当然、苦玉を持ちます。

苦玉を含めた臓器類はフニャフニャと柔らかい部位の集まりなので、締めた魚の取り扱いによっては右に寄ったり左に寄ったりして、思った場所に見当たらないケースもあります。

だいたい、下の赤丸の部分にあるので魚を捌くときの目安にしましょう。

コショウダイ

魚のお腹に包丁を入れるときは苦玉を破らないように気をつけてくださいね。緑色の丸型、もしくはフットボール型の臓器を発見したら、それは苦玉ですので慎重に取り除いてください。

魚の種類によっては緑色ではないパターンもあるので注意。

もし苦玉を潰してしまった場合は、落ち着いて内臓ごと魚の身を洗い、胆液が染み込んでしまった箇所は包丁でそぎ取るようにしましょう。

肝や白子、真子など、魚の臓器や卵は美味なものも多いですが、慣れないうちは慎重に取り扱うべきです。

イシナギのように、肝臓に中毒物質を持っている魚もいますの安易な内臓食は避けましょう。

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