コショウダイ(胡椒鯛)というあまり聞き慣れない魚は、値段の割に味の良い白身魚。しかしあまり市場には出回らないレアな魚でもあります。
今回は、そんなコショウダイの特徴や味など、気になるところを紹介していきたいと思います。
コショウダイとは?値段が安くて美味しい魚!
コショウダイは「イサキ科コショウダイ属」に属する魚で、名前を漢字で書くと「胡椒鯛」となります。
イサキ科の中で有名な魚といえば、イサキ属の「イサキ」。そして、それよりもやや知名度は低いコロダイ属の「コロダイ」など。
ちなみに、イサキもコロダイも高級魚ですが、コショウダイは微妙なところでしょう。
「胡椒」とは字のごとく、調味料でおなじみのコショウのことで、コショウダイの独特な体の模様が胡椒の粒に似ているため、この名前で呼ばれるようになったそうです。

コショウダイの値段(なぜ安い?)
既に書いたように、コショウダイは高級魚とは言えない魚です。しかし味は他のイサキ科に負けないくらい美味しいので、お得感はピカイチと言えるでしょう。
高くても、1kgあたり1000円ほどの値段で売られていることが多く、たいていはそれ以下です。
例外的に、旬の時期や状態の非常に良いもの、まとまって水揚げされた時などはそこそこの高値がつくこともあるようです。
なぜコショウダイが安いのか、まず言えるのは、漁獲量が圧倒的に少ないからです。仕入れの見通しが立てづらいコショウダイは、魚を売る側からすれば「売りづらい魚」になるようです。
しかし漁獲量が少ないがゆえに高値をつける高級魚はたくさんいます。
ここからは個人的な考察ですが、2つ目の安値の理由は、「見た目と名前」ではないかと感じます。
「胡椒の模様」と言えば聞こえは良いですが、黒いブツブツは見ようによっては食欲を削がれる人もいるかもしれません。
そして名前の「胡椒」も、日本人にとっては、こと和食においてそこまで重要な調味料ではないと言えるでしょう。例えば、「寿司」と「胡椒」って、結びつけづらい組み合わせですよね。
そもそも市場に少ないこと、名前と見た目から敬遠されがちなこと。これらの理由で、コショウダイの知名度は低く、そのために需要も上がらないのかもしれません。
旬の時期
コショウダイは初夏(5月から6月頃)になると、産卵のため沿岸域にやってきます。
そのため初夏は低地網漁にかかりやすく市場に出回るので、この時期を旬とする考え方があります。
産卵前に栄養を蓄えた個体は脂も乗っていて美味。しかも西日本などで比較的まとまって漁獲されることもあり値段もお手頃と、初夏のコショウダイは狙い目と言えるでしょう。
ただし、産卵期は卵を持った個体もたくさんいて、卵持ちの、または産卵後のコショウダイは味が落ちるとされます。
一方で、秋から冬にかけて沖合の船で獲れる個体が最も美味しいとする意見もあります。
しかし秋冬は漁獲量が少なく、価格が高くなる傾向にあることを覚えておきましょう。
総じて、コショウダイは年間を通して美味しい魚(産卵前、産卵後を除く)。
ただし、上述の通り、季節によってコショウダイの性質は大きく異なることは認識しておきましょう。
コショウダイの味
何度も書いているように、コショウダイは美味しい魚です。
「胡椒」の模様があるからといって、スパイシーな味は一切しません。コショウダイは白身の魚で、先ほども紹介したイサキよりは、コロダイに味の方向性は似たものがあります。
コショウダイはタイ科の魚ではありませんが、不思議と、マダイやクロダイなどに共通した味わいを感じます。ただし食感は全く異なり、繊維が強めで、大型の個体はより顕著に感じるでしょう。
コショウダイは最大で60㎝ほどの大きさに成長します。
刺身なら大型のものでも美味ですが、焼いて食べるなら40㎝にならない程度の中型の個体の方が、味というか、食感が良い気がします。
コショウダイのレシピ
コショウダイは、鮮度の良いものは刺身で美味しい魚。より大型個体の方が刺身向きかもしれません。
食感がしっかりとした魚で、白身魚だけどあっさりし過ぎず、独特の旨味があるので、刺身で引き立ちます。血合いも美しくて刺身に切った時の見栄えも良いです。
また、焼いても美味しい魚で、塩焼き、ムニエルでいけます。皮は硬く、バターでじっくりソテーすればパリッとした食感が楽しめます。ただし、人によっては苦手な人もいるかも。
アラから良い出汁が出るので、スープの出汁に使ったり、兜煮でもいただけるでしょう。
寄生虫はいる?
コショウダイに限らずだいたいの魚に言えることですが、大型の個体には寄生虫が付きやすい傾向があります。
長く生きていると当然その分たくさんのエサを食べるので、寄生虫をどこかの食事で摂取してしまっている可能は高まります。
コショウダイにいる寄生虫で有名なのは「ディディモゾイド」という寄生虫。人体には影響はありませんが、見た目には不快感を感じる生物ですので、ディディモゾイドのついたコショウダイを食べるのには勇気がいるでしょう。
また、アニサキスは多くの魚介類に寄生し、宿主である魚介類を食べた人間にも影響のある厄介な寄生虫。この寄生虫には注意が必要です。
コショウダイにアニサキスが寄生していたという話はあまり聞きません(サバやホッケなどがアニサキスの中間宿主として有名)が、可能性はゼロではありません。
【名前の話】コショウダイ英語で何と言う?
コショウダイの名前の由来が、「体の模様が胡椒のようだから」であること書きました。
しかし別の説として、「昔、小姓がよく着ていた服を思わせる」から「小姓鯛」であるというものがあり、意見が分かれるところのようです。
なお地方名としては、「カイグレ」や「オゴンダイ」などとも呼ぶ地域もあります。
ちなみに、コショウダイを英語で訳すと「crescent sweetlips」です。
日本語に直訳すると「三日月の恋人」だそう。「sweetlips」の意味は「甘い唇」。

言われてみれば、コショウダイの唇ってなんだか艶っぽい気がしてきました。