天然の鮎(アユ)は日本の夏の風物詩の一つ。俳句の季語にもなっています。
日本人にとって昔から特別な存在でもある鮎、その漁獲量ナンバーワン地域は意外にも茨城県だそう。
同県の那珂川や久慈川では天然物の鮎が遡上することで有名ですが、人工的に孵化させた幼魚を放流することもあります。いわば半分養殖の鮎ということ。
養殖の鮎をなぜ河川に放流するかというと、「遊漁」つまりフィッシングのためです。
一方、食用とするための完全養殖も日本全国で行われていて、言わば鮎は日本の食文化を担っている魚の一つということ。鮎(アユ)のおすすめ料理も紹介してます。
ところで、天然物の遡上する河で鮎を釣りあげた時、それが半分養殖の鮎か、完全に天然物の鮎なのかを判断する材料ってあるのかな?と疑問が湧きませんか?
今回は天然物の鮎と養殖物の鮎、両者の見分け方を紹介していきます。
鮎(アユ)の天然物と養殖物の違いと見分け方を解説!
早速ですが、鮎の天然物、養殖物の違いと見分け方を解説していきます。
ポイントは
- 天然の鮎は各部のヒレが大きい。養殖はその逆。
- 天然の鮎は胸ビレの後ろに黄色い斑点が出やすい。
- 天然の鮎は顔立ちがたくましい。対して養殖は丸みがある。
天然鮎はヒレが”たくましい(大きい)”
流れが速い川に住んでいたり、ストレスの多い環境で育つため、天然の鮎は養殖モノよりも発達しているという違いがあります。
下の写真は天然物の鮎のヒレです。


対する養殖物の鮎は、ヒレが小さく丸みを帯びているので、並べて見比べると一目瞭然です。
天然鮎に出やすい特徴的な斑点
下の写真の赤印の鮎に注目してください。

胸ビレの少し後ろの方に黄色い斑点がありますよね。

これは縄張り意識の強い天然ものに出やすい証で、養殖鮎には無いことが多いです。
見分け方の一つとなるでしょう。
ちなみに、上の写真の鮎は濃い錆色をしていて、一般的な銀白色の鮎のイメージとだいぶ異なります。これは天然、養殖の違いによるものではなく、鮎は晩年になると「錆鮎」と言って体の色が変化する特徴を持ちます。詳しくは割愛しますが、様々な鮎の名前についての記事で説明してますので興味があれば読んでみてください。
天然は「角ばっている」、養殖は「丸っこい」、色も若干違う
天然の鮎は石の表面の苔を口で剥ぎ取って食べますが、養殖の鮎は人間が与えた餌を食べるため、顔(顎)が発達せず、丸っこい(逆に天然物は尖っている)見た目になります。
さらに、運動量の違いから、養殖は丸々と太ったようなフォルムになりがち。天然モノはその逆の角ばったフォルムになる傾向があるようです。

体色にも違いが出る場合があります。鮎は背側が苔(コケ)のような青みがかった緑色をしていて、天然ものはこの緑が背側全体であるのに対し、養殖は狭い範囲であることが多いです。
ただし先に書いたように、鮎は時期によって体の色が変化してくるので、色だけで見極めるのは難しいかもしれません。
半分養殖の放流鮎は見分けがつかないことも
ポイントをまとめると、
天然の鮎はたくましいヒレに引き締まったお腹、キリッと顔立ちをしている。対する養殖の鮎は、ヒレは小さくお腹は太っているし顔は丸々としている。そして体に浮き出た黄色の斑点は天然鮎に出やすい特徴
このことを覚えておけば、2種類の育ちの異なる鮎が目の前に並んだ時、きっと正しい見極めができるでしょう。
なお、オスとメスの違いを、天然物と養殖物の違いと誤解しないようにしてください。
メスの方の丸みを帯びた顔立ち、体型に反し、オスは角ばった見た目をしています。
また、冒頭で書いた”半分”だけ養殖の鮎(いわゆる放流鮎)は、天然の環境に長く身を置くことで、天然物の鮎と同じ特徴が出ることがあります。
まったく同じ顔、同じ格好の人間がいないのと同様、鮎も生き物なので個体によって特徴は様々。養殖鮎に出やすい特徴、天然鮎に出やすい特徴を幾つか見比べ、総合的に判断するしかないと思います。
加えて、入手した場所(どの川のどの場所で獲ったか?)も、養殖かそうでないかの大事な見極めポイントと言えそうです。