先日、クロソイに関する記事を書きましたが、とてもよく似ている魚で「マゾイ」というのがいます。
マゾイは標準和名を「キツネメバル(狐眼張)」と言い、しかし別名である「マゾイ」の呼び方が一般的かも。


これは見分けつかんでしょ・・・。むしろ同じ魚でしょ(違)
というわけで、今回はマゾイとクロソイの違いを紹介しつつ、見分け方のポイントを解説していきます。
はじめに、判別方法はというと、
「顔の涙骨という場所にトゲがある/ない」で見分けます。
涙骨にトゲが・・・、
- ある→クロソイ
- ない→マゾイ(キツネメバル)
両者の違いと見分け方、さらに細かく見ていきましょう。
マゾイとクロソイの違いと見分け方
まずマゾイとクロソイの共通点として、両者とも「メバル科メバル属」に分類される魚であります。近縁種であり、形が似るのも当然と言えば当然。
しかし厳密にはお互い別個の生物です。
マゾイとクロソイの違い
当たり前の話ですが、マゾイは「キツネメバル」という種、クロソイは「クロソイ」という種である、という違いがあります。
つまり、両者は生物学的には別の生き物でありながら、近縁種であると言えます。
例えて言うなら、われわれ人間(ホモサピエンス)と「ネアンデルタール人」の違いみたいなものでしょうか。
マゾイとクロソイの見分け方
さて、クロソイとマゾイの違いは「涙骨」という部位のトゲのある/なしで簡単に見分けることができます。
具体的には、以下の赤丸部分に注目します。

上の写真はクロソイですが、口の方に向かって(下に向かって)顔に沿うように3本のトゲがあるのがわかるでしょうか?
これがクロソイの特徴。ちょっと絵的にはわかりづらいかもですが、実際に見たり触ったりすればすぐ分かるレベルのはっきりとしたトゲです(下の写真の通り)。

対するマゾイはこちら↓

涙骨の所にトゲがありませんね。
なるほど、これは一目瞭然!
あと、クロソイはマゾイよりも大きくなる魚ということも覚えておくと良いかもしれません。知らないと本当に見分けがつかない魚たちです。
ちなみに、メバル属には黒メバルをはじめ、見た目の似た魚がたくさんいて混乱しがち。
マゾイ(キツネメバル)はどんな魚?
クロソイが体長60センチくらいまで大きくなるのに対し、マゾイは45センチほどとやや小さめ。
北海道南部から本州に広く分布し、大衆的な魚と言えるでしょう。しかし市場ではクロソイよりもやや値が張る印象(養殖、天然の違いもありますが)。味も、マゾイの方が良しとする傾向が強いように思われます。
秋から冬にかけて交配して春〜初夏頃に出産します。このサイクルはクロソイとほぼ同じです。卵巣内で卵から孵化した小魚を出産する、というタイプで、これもクロソイと同じみたいですね。
生息域は水深50〜100メートルの岩礁域で、これもクロソイと重なります。
身体的特徴を見てみましょう。
まずはナメてるとケガする背びれのトゲトゲ

尾びれに近い方の背びれは実はフニャフニャ↓

と思いきや、尻びれ↓には鋭いトゲが隠れています。

尾びれは柔らかいですが・・。

腹ビレ↓には尖った部分が・・。

でかい胸ビレ。

そして鰓蓋(えらぶた)↓は鎧のようにトゲトゲがあり危険。

正直、ヒレなどの特徴もクロソイと瓜二つです。逆に、別の種だとした人間の細かさよね。
マゾイは正式には「キツネメバル」
ところで、この魚の標準和名は「マゾイ」ではなく「キツネメバル」と言うそうです。この標準和名、僕が通う市場では使われてないですね。関東の市場ではあまり使われないのかもしれません。
ちなみに「マゾイ」というのは「ソイ類の代表的なもの」、という意味で、この「マ」は「マダイ(真鯛)」なんかと同じ使われ方ですよね。「真(マ)」。
蛇足ですが、「マダラ」の「マ」はマゾイやマダイの「マ」とは違いますからね。
諸説ありますが、一般的には「斑(まだら)」ってことらしいですよ。
「ソイ」の由来とは
で、「ソイ」というのは「磯魚(いそうお)」という言葉がいろいろ転訛して「ソイ」ってなったらしいです。昔からとても身近な魚だったということかもしれませんね。
「キツネメバル」はその名の通りキツネのような顔付きから・・、
って似てる???
ただこれ、もともとは英名の「Fox Jacopever」を単に訳しただけじゃないかと言われてたりもしてますね。
じゃあ欧米の人にはこの魚がキツネに見えたってことか・・?
それとも「Fox」にまつわる何かしらの由来が、欧米にはあるのでしょうか・・。謎です。どなたかご存知でしたら教えてください。
仲間いっぱいメバル属
マゾイやクロソイも属する「メバル属」にはたくさんの仲間がいます。
単に「メバル」と呼ばれる3種(クロメバル、アカメバル、シロメバル)や、タケノコメバル、ウスメバル、高級魚のアコウダイ(メヌケ)もメバル属です。
そして、キツネメバルがいるのでまさかとは思いましたが、いました「タヌキメバル」。
市場などではこれらは一緒くたに「マゾイ」として分類されるようですが、学術的には別の魚となります。
クロソイやマゾイの寄生虫
クロソイから発見した寄生虫を「クロソイに取り付いたガチもんの寄生虫」の記事にて紹介しています。
クロソイとマゾイは形だけでなく生態も似ていることから、同じような寄生虫に取り憑かれることが多いでしょう。
注意すべき身近な寄生虫であるアニサキスの寄生を発見したことは、幸いにも今までありません。
しかし、キジハタに寄生していた「リリアトレマ・スクリジャビニ」らしき生き物は、マゾイにも寄生している可能性アリです。
寄生虫の中には人体へ無害な種類もいますが、アニサキスのように食中毒を引き起こす種も存在するので十分に注意が必要です。
マゾイとクロソイは激似すぎる
最後におさらいです。
クロソイは涙骨にトゲがあり、マゾイ(キツネメバル)にはありません。
ちょこっと調べただけでも、「マゾイ」にはキツネとタヌキがいて、、、と、生き物の世界を学術的に見ると本当に奥が深いですよね。クロソイとマゾイの違いにしてもそう。
ただし、料理人目線で考えると、どちらも同じ美味しい魚で甲乙付け難い存在です。