食用魚「カマス」の名前に関するお話です。
カマスのことを秋刀魚(サンマ)と勘違いする人がいるかもしれませんね。
もしくは、サンマの親戚みたいなものだろうと考える人はいるのでは?
確かにシルエットはよく似ていますが、カマスは白身魚。スズキ目サバ亜目カマス科に属していて、サンマとは全く別物です(サンマはダツ目ダツ上科サンマ科)。
そんなカマスの名前の意味は、「叺(かます)」という大昔の道具袋のことだそうです。(ただし「梭子魚」と書く場合もある)
叺(かます)という袋は、昔は藁(ワラ)で作ったもののことを指していましたが、時代とともに麻を使ったミシン縫いの袋も叺と呼ばれるようになったとか。
とにかく、叺という袋に似ているという理由がカマスの名前の由来ということ。
しかし、魚のカマスの見た目からは「道具袋」を連想しづらいと思うのは僕だけではないはず。
今回は、そんなカマスの名前について考えてみました。
「カマス」の意味(「叺(かます)」という”袋”が由来)
さて、冒頭の写真は正確には「ヤマトカマス(大和叺)」という種のカマスです。
単に「カマス」と言ったら普通はこのヤマトカマスのことを指します。
そして、書いた通りカマスの名前の意味は「叺(かます)」という道具袋のこと。
「叺(かます)」とは?
叺(かます)がどんなものか説明すると、長方形の筵(むしろ)を折って袋状にした、色々な物を収納するために昔の人が作った道具です。
筵(むしろ)ってのはこんなやつ。

筵(むしろ)を、袋状にしたものがこちら。

そして、魚のカマスの名前は、口が上の袋(叺)のように大きく開くので、この魚をカマスと呼ぶようになったとする説が有力だそうです。
なるほど?
カマスの口は本当に「叺」なの?
しかし、カマスが叺と呼ばれる袋のようだと言いますが、本当にカマスの口って大きく開くのでしょうか。

こじ開けてみました。

・・・微妙!
もっとバカみたいに口を大きく開ける魚ってたくさんいると思うのですけど。
「カマス = 袋の叺(かます)」って説は大目に見てもちょっと無理があるのでは??
「カマス」という名前が持つストーリーは、もっと別のものがあるのではないでしょうか。
「馴染みの道具として使われていた」説
名前の由来となった叺(かます)という袋状の道具は、昔、水産関係の仕事で良く使われていたらしいです。
ひょっとして、魚の口の大きさ云々というより、馴染みのある道具としての名前が付けられたパターンなのではないのかな?
大量に取れた魚(カマス)を入れる袋が「叺」だった、とか・・・。
カマスの見た目が似ているって根拠よりは説得力があるのではないでしょうか。
「かます(咬ます)」ではないか
もう一つ可能性があります。
「しょうもないボケをかます」とかで使われる「カマス」じゃないですかね。
要するに「ツッこむ」とか「叩く、食らわせる」等のニュアンスではないかと思うのです。「ぶちかます」みたいな。
というのも、この後詳しく書きますが、カマスという魚は攻撃的な性格の種が多いようです。
もしかしたらその昔、漁のときに「かまされた」人がいたのではないでしょうか。
「梭子魚」の話
さて、「カマス」の呼び名の由来はいったん脇に置いといて、ここではカマスの別の呼び名を紹介しましょう。
記事の冒頭でも書きましたが、「梭子魚」と書いて「カマス」と読みます。
ところが、これは実は当て字。
もともと、カマスは「梭子魚(さしぎょ)」とも呼ばれていたそうで、意味は江戸時代の機織の横糸「梭(さ)」に似ていたからなのですが、
その「さしぎょ」という読みが消えて漢字の「梭子魚」を「カマス」と読ませるようになったそうです。
ちなみに、「梭(さ)」とは、細長いひし形の部品で、確かにカマスという魚にとても良く似ており、由来としては非常に説得力はあると感じました。
「梭(さ)」が気になる方は、googleで画像検索してみてください。
バラクーダの話
さて、話を戻します。
カマスの生態とかを調べて、由来に関する情報がないか当たってみました。
カマスの旬は初秋と春。2度美味しい魚です。
体長はそれほど大きくありません。せいぜい30㎝を少し超えるくらいです。群れを成して主に沿岸域を活発に泳ぎ回ります。そして魚食性。イワシなどの魚を貪欲に食します。
泳ぎは得意なようです。
さらに、カマスの近縁種も調べてみました。
同じ「カマス科カマス属」に「オニカマス」という、とんでもないバケモノ魚がいます。
体長が2メートルを超え、積極的にヒトを襲う魚として知られているそうです・・。
デカい上にめちゃくちゃ泳ぎも速く、特に熱帯の海では実際に被害が報告されており、サメと同様に気をつけなければならない魚だそうです。
さらに、このオニカマスは「シガテラ毒」という毒素を体に持っていることがあるらしく、「食べてはいけない魚」としても広く知られています。
そして、カマスの英名は「バラクーダ(Barracudas)」。
「バラクーダ」という名前の雰囲気は、オニカマスのモンスターぶりにピッタリな気がしますね。
「バラクーダ」の名前を冠した戦闘機や魚雷などが存在したそうです。
オニカマスやバラクーダの話からも分かるように、カマスと呼ばれる種は総じて攻撃性が高いということが言えます。
つまり、何が言いたいかといえば、やっぱり「カマス = 咬ます」なのでは??ってことです。
コメント