細長くいびつな姿が一目見たら忘れない食用魚といえば「ヤガラ」という海のお魚。料亭などで利用される高級魚です。

ヤガラという名前は漢字で「矢柄」と書き、つまり武器として使われる「矢」の柄(え)のこと。見た目がそっくりなところからついた名前であることが伺えます。
深海魚には見た目が奇抜なものが多いからきっとヤガラも海の底深くに住んでいるのでは??・・と思いきや、ヤガラは深海魚ではなく割と浅い海に住んでいます。

食材としての流通量は少なく、それもまた高級魚として扱われる要因で、プロの料理人でもない限り手に取ることは滅多にない珍魚指数の高い魚でもあります。
今回は、そんな謎多き魚である「ヤガラ」を掘り下げてみたいと思います。
細長い食用魚の名前は「ヤガラ」です
ヤガラの細長い姿は食用魚であるということさえ疑いたくなりますが、ちゃんと食べれるどころか高級食材として扱われます。
しかも「超」がつく高級魚。家庭の食卓で見ることはほとんどないでしょう。割烹料理や寿司ネタとして、お高い料理に使われることの多い魚です。
そもそも漁獲量が少ないことも値段が高騰する一因かもしれませんが、なんと言っても味が文句なしに良い魚であり、高値であっても文句なしの魚です。
味覚、そして何よりインパクトのある体のフォルムを細かく紹介していきます。
とは言え、ヤガラって“まずい”の??
ヤガラが高級魚であるからと言って必ず美味しいとは限りません。味はどうなのでしょうか?
超高級魚であるヤガラの旬は秋から冬と言われていますが年間を通して味の変化が少ない魚。通年で流通しますが先ほどから書いている通り漁獲量は常に少なめです。
身質は白身ですが決して淡白ではなく、甘みもありバランスの良い味わい。そう、美味しいです。誤魔化しの効かない刺身で非常に美味。高級魚と言われることも納得です。
筆者が今まで食べた中ではハッカクに近いかな?と感じました。白身の中でも“あっさり”よりは旨味の強い方だと思います。

クセが強いと言えば強いので、魚が苦手な人にはマダラなどのあっさりとした白身魚のほうがおすすめです。
骨はしっかりと太いので処理はしづらく、しかしその骨から良い出汁が出るので煮物でも美味しいですよ。

他にもいる「細長い魚」
細長い魚、ヤガラの他にはどんなのいる?と考えると「太刀魚(タチウオ)」がまず思い浮かびます。

ヤガラを三枚におろしてみたところ、タチウオと比べて非常に捌きづらいと感じました。骨が多く太いヤガラは歩留まりが良いとは言えず、同じ細長い魚だけどヤガラとタチウオで体の構造は微妙に違うようです。タチウオは細長くさらに平べったい魚だけど歩留まりは見た目より良いことが多い魚。
ヤガラとタチウオで違う部分はいろいろありますが、大きく違う部位の一つが「吻(ふん)」と呼ばれるパーツ。
細長い魚「ヤガラ」の特徴
魚の「吻(ふん)」とは、人間で言うところの「口」に当たる部分で食べ物を取り込む器官のこと。ヤガラの「吻(ふん)」は他の魚にはない独特の形状をしています。
鳥のクチバシのように硬く、細長いカタチ。

見た目の割に大きくは開口できず、いわばスポイトのような作りになっていることにも驚かされます。


ただし、ヤガラはその変わった口で何か特別な餌を食べているわけではなく、他の魚と同様に小魚や小さな甲殻類を主に食べています。
興味深いのはその食べ方。
細長い形状を利用して、岩やサンゴの隙間から獲物を効率よく捕食できるようになっています。
ヤガラは、全長1メートルを越すまでに成長します。
ヘビのように、ニョロニョロと全身を使って泳ぐ姿を想像しがちですが、実際は尾びれあたりを他の魚と同様に少しクネクネさせる程度で、ヘビの動きとは少し異なります。
体の割に小さなヒレを忙しく動かす姿は、ヘビよりもウマヅラハギなどの魚と似ていると言えるでしょう。


尾びれも特徴的。
ヤガラの尾びれは上下が二股に分かれて、真ん中から針のように細い「鰭条(きじょう)」と呼ばれる部位が伸びています。

詳しい解説はwikipediaなどを見ていただくとして、要するに「鰭条」とは矢柄の骨の一部です。
ヤガラには鱗はありません。ただし、体の真ん中を通る「側線(そくせん)」と呼ぶ骨張った筋状の部位が発達し、尾びれの鰭条にまで達しています。側線も含めて、ヘビのようなニョロニョロではなく、トゲトゲしいので扱いにはご注意を。
“武器”に由来する名前の魚
ヤガラ名前は“矢”に由来する名前でしたね。
他にも、先ほど出てきた太刀魚は言わずもがな、サゴチはヤガラと同じように“矢”に由来する名前となっています。

他にも武器のような名前を持つ魚はいるはずなので、探してみるとおもしろいかもしれません。
実際、なかなか食べる機会はなさそうな魚ですが、割烹料理店などを訪れる機会があれば、ぜひヤガラを注文してみてください。
見た目はヘンテコでも美味しい、というのは魚の常。
上品な味わいにビックリすること請け合いです。
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