スケトウダラは明太子の原材料として欠かせない食用魚。
スケトウダラの卵巣を加工して明太子や辛子明太子が作られるわけですが、切り身など他の部位は、干物をはじめ様々な加工品にされることがほとんどで、刺身や煮物など、スケトウダラを一次利用で食べる(鮮魚の状態で入手して食べる)機会は意外と多くありません。
それゆえ、スケトウダラがどんな魚か詳しく知る人は多くないと思います。
そもそもスケトウダラとは?
タラ(マダラ)との違いは?
刺身でも食べれるの?
スケトウダラの疑問について調べてみました。
スケトウダラとは?タラ(マダラ)との違いと刺身の注意
あまりにも有名な「明太子」が注目されがちですが、たまに加工品にされていない丸のままの鮮魚を入手した時のため、スケトウダラ本体にもスポットを当ててみます。
明太子とタラコの違いについても詳しく記事にしてますので、興味があれば覗いてみてください。

スケトウダラは鮮魚の状態でたくさんは出回りません。大量に流通するのは加工品業界のほう。
もし近くの鮮魚店にスケトウダラが売られていた場合、加工品にまわす分から余るほど大量だったのかもしれませんね。それくらい、加工前のものを見るのは意外と珍しいと言いたいのです。
存在は身近だけど実態はあまり知られていないスケトウダラ。
スケトウダラというくらいですから、タラ系の魚なのかな?というとその通りで、マダラなどと同じタラ科のスケトウダラ属に分類されれます。
スケトウダラとタラ(マダラ)の違い
スケトウダラはマダラの近縁種。この2つは別々の違う魚ですが、同じ「タラ」という分類に属しています。
スケトウダラは「タラ目タラ科スケトウダラ属」の魚で、対するマダラは「タラ目タラ科マダラ属」。
一般的に「タラ」と言えば「マダラ」のことを指しますが、スケトウダラのことを「タラ」と言っても間違いではありません。
「スケトウダラとマダラ、どっちが美味しいの??」と率直に思う人のために、どっちも食べたことがある筆者から回答。「どっちもそんなに変わりません!」
スケトウダラもマダラもあっさりした白身魚で、身に含まれる水分が多い深海性の魚。淡白すぎる味わいはフィレオフィッシュに使われるのも納得です。
スケトウダラのマダラの違いを細かく見ていきましょう。

スケトウダラは、マダラに比べると、
- ヒゲが短い
- 目がでかい
- 下アゴが突き出ている
- 全体的に小さい
- 模様が微妙に違う
などの特徴があり、マダラより一回り小さい体をしています。
見慣れていないと間違えてしまうこともあるかもしれませんが、上記ポイントを押さえて冷静に観察すると違いはハッキリしているので大丈夫です。
上記の相違点を抑えていれば間違うことはほぼ無いでしょう。
ちなみに、スケトウダラやマダラの仲間にはコマイ属の「コマイ」もおり、こちらも練り物や干物に加工されやすい魚として知られます。

スケトウダラではなく、スケ“ソ”ウダラという名前を聞いたことがあるけど、スケソウダラも同じタラの仲間なのでしょうか?
スケトウダラとスケソウダラの違い
スケ“ト”ウダラとスケ“ソ”ウダラ。名前は両方とも聞いたことがあるけど、どっちが正しいのでしょうか?
「ト 」と「ソ」の違いは誤字ではなく、どちらも同じ魚のことを指す名前。
違いは、標準和名が「スケ“ト”ウダラ」の方で、スケソウダラは一般的な呼び名。筆者の住む関東ではどっちも使われる気がしますが、漁業関係者は「スケソウ」、「スケソ」と呼ばれ短縮化されて使われることが多いらしいです。
スケソウダラを漢字で書くと「助惣鱈」や「助宗鱈」になり、当て字のため漢字に意味はありません。
スケトウダラを漢字で書くと介党鱈
標準和名のスケトウダラは、漢字で書くと介党鱈になります。スケソウダラ(助宗鱈)と同様、単なる当て字で漢字に意味はありません。
「スケトウダラ」の名前に何か由来があるのかというと、よく分かっていないようです。
名前の由来は諸説アリ。
- 「佐渡」が由来で「スケトウ(漢字で「佐渡」)」と呼んでいた
- 「鮭の鱈」が「スケタラ」に転訛し、それが由来となった
- 漁が難しいので「助っ人」が必要だったから
いずれも切り口が全く異なる説でどれが正しいのかは謎です。
「タラ」という言葉は、そもそも「斑(まだら)」が由来との説が有力で、つまり体の不規則な斑紋の見た目が理由です。
漢字の「鱈」は、雪のように白い身を意味したり、雪の降る冬にたくさん獲れる魚であることを指したりと様々です。
スケトウダラは深海魚
スケトウダラは水深200〜500mほどに生息する深海魚で、体長は約70㎝。
寿命はよく分かっていないようですが、15年ほど生きるという説も。
産卵期は、12月〜翌3月頃の間で地域毎に変動し、肉食性で、小魚や甲殻類の他に貝類なども捕食対象と、マダラほどではなくとも食いしん坊なのでしょう。
北太平洋に広く分布していて、日本だけなく様々な国で食べられている魚です。

体表はマダラと同様にヌメっとしており、深海魚の特徴を持ちます。

スケトウダラは青魚?
スケトウダラは青魚ではありません。
「青魚」は、シンプルに言えば背中が青い海水魚のことで、海面近くを泳ぐパターンが多く見られる一部の魚に対する分類名です。
スケトウダラのような白身魚が必ずしも青魚ではないとは言えず、赤身魚だけが青魚でありませんが、先にも書いた通りスケトウダラは深海魚で、青魚の特徴を持ち合わせていません。
青魚と白身魚、赤身魚の違いについては、別記事で詳しく解説しています。
スケトウダラの刺身は注意
スケトウダラを刺身で食べるには注意が必要。
というのも、美味しいのは美味しいのだけど、寄生虫のリスクが高い魚なのです。
アニサキスやシュードテラノーバが高確率で寄生しています。筆者もスケトウダラを処理していて何回も遭遇していますので、生食はあまりオススメしません。
タラ系は、アニサキス系の寄生虫がよくいるのですが、それ自体は珍しくはありません。
加工品が主流の魚は、メインの流通網から脱線して市場に出回ることが多いとかの理由があるのか、鮮度の良い状態で売られていることが少ないように思います。
アニサキスなどの対策は、鮮度が極めて良い状態で食べるのが一番効果的。
理由は、アニサキス達は宿主の死後に内臓から筋肉へ移動を始めるからです。鮮度が良ければ内臓に残ったままなので、内臓さえ処理してしまえば問題ないことがほとんどです。
鮮魚のスケトウダラはあまり出回らないことが多いとすると、アニサキスが身に移動してしまっている確率が高め。
その上で、スケトウダラの刺身の味は?というと、とてもあっさりした白身で、鮮度イマイチの青魚系を食べるくらいならスケトウダラの刺身のほうが良いと思うほど美味。
マダラと同様、身に含まれる水分が多いので、昆布締めやピチットを使った身の凝縮はした方が美味しくなるでしょう。
刺身でも美味しいのだけど、繰り返しますがタラ科の生食は注意が必要。とりわけスケトウダラの場合、生食はハードルが高いと言わざるを得ません。
もっと強く言えば、よほど新鮮なものでない限りスケトウダラの生食は避けるべきかもしれません。
フィレオフィッシュの魚はスケトウダラ
スケトウダラとマダラはどっちが美味しいかについて先ほど触れましたが、両方とも淡白な味わいだから万人向けの魚であると言えます。その裏付けとして、あの「フィレオフィッシュ」の魚として使われているのが、マダラやスケトウダラという事実があります。
フィレオフィッシュはマクドナルドの古くからのレギュラーメニュー。
フィレオフィッシュに使われる魚は、都市伝説のような形で物議を醸すことが多いですが、マクドナルドの公式ホームページ(https://www.mcdonalds.co.jp/products/1110/)のメニュー説明で、魚の種類や原産国などの情報が詳しく記載されています。
抜粋すると、フィッシュポーションの種類はスケソウダラで、アメリカやロシアで水揚げされたものをタイや日本で加工しているとのこと。
昔はマダラがフィレオフィッシュに使われていましたが、いつの日かスケトウダラに変わったようです。ちなみに、使われる魚は国によって変わるそうです。マクドナルドは世界中に支店があるので、それぞれのお国の事情や流通事情により、臨機応変に食材を選んでいるようです。
おっと、ところでマックさんは「スケソウダラ」って呼んでるんですね。笑

スケトウダラの白子は美味
タラの白子と言えば高級品ですがそれはマダラの話で、スケトウダラのものはちょっと格が落ちます。
だけどスケトウダラの白子も旨い。
卵巣は「明太子」として超有名ですが、精巣もイケます。

さっと湯にくぐらせてぽん酢で食べるのが美味しいですよ。あとは天ぷらにしたりも。

スケトウダラの加工品ってどんなものがあるか気になりますよね。明太子、たらこは言うまでもなく。
丸干しや棒鱈などに代表される干物に始まり、かまぼこや竹輪などの練り製品など、スケトウダラは幅広く加工品として利用されています。
ただ、普通に焼き魚として食べたり、ホイル焼きや鍋物でももちろんOKです。火を通せば寄生虫リスクもなくなるし安心。
火を通して食べるスケトウダラは、やっぱり淡白であっさり系。
固くならず、むしろホロホロと崩れるタイプの身質はマダイと同じです。
魚が苦手な人には好まれる味だと思いますし、バターなど乳製品との相性が良く洋食にもピッタリな魚です。
なにせ、あの天下のマックさんがフィレオフィッシュに使っている魚ですからね。
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