「エチオピア」という不思議な名前の海水魚をご存知でしょうか。
正式名称を「シマガツオ」と言い、食用だけど一般家庭の食卓にはまず並ぶことはないであろう、謎多き魚です。
マイナー魚だからこそ、名前以外にも気になるポイントはあります。
- 別名「エチオピア」の由来とは?
- 海の中でどう暮らしているの?
- 食用魚としての”味”はどうなの?
・・・ということで今回は、エチオピアこと「シマガツオ」の情報を集めてみます。
まず話の取っ掛かりとして“味”に焦点を当てると、エチオピアの味、巷では「酸っぱい」との噂があるとか。酸っぱい魚ってどういうこと?
実際に食べてみた感想は後ほど。
見た目に関しては筆者の個人的な感想を先に述べると、ドラクエに登場する「とつげきうお」に似ていると思ってます。見た目ちょっと怖めのリアルとつげきうお。
名前や見た目がインパクト大!な、とつげきうお・・もとい、シマガツオの情報を深掘りしてみましょう。
シマガツオ(エチオピア)は酸っぱくて「まずい」??
シマガツオ(エチオピア)の味うんぬんの前にまず強調したいのが、ウロコの硬さが尋常ではない魚であるという点。
通常、魚の鱗は専門の道具である「ウロコ取り(下のようなやつ)」でガシガシ取ります。イワシやアジなど小さく繊細な魚ならいざ知らず、しっかりめのサイズの白身魚を処理するなら必須の道具。
ウロコの形は魚によって千差万別で、取りやすい魚もいれば取りづらい魚もいるのは当然ですが・・・。
「他に類を見ない」と表現してもおかしくないほど、超絶ガッチガチのウロコを持つシマガツオ。
ウロコ取りではなく「すき引き」で処理すべき魚でした。

そしてお待たせしました。酸っぱいとされる「味」のほうはどうなのでしょうか。
シマガツオの味は独特だがマズくはなかった
魚の味を表現するときに「酸っぱい」というのが、ちょっと想像しづらくて半信半疑でした。
酢締めにするでもなく酸っぱいとは一体どういうこと?まさか急激に腐りやすいとか・・。
真偽のほどは食べればハッキリするでしょう。
取りづらいウロコを地道に除いて捌いたシマガツオの半身がこちら。

身質はピンクがかった白身で、深海魚らしくプリプリとしていて触った感じはメダイとかに似ているかな?という印象です。(味のことではなく、あくまで身質の印象)

メダイよりも脂が多く感じれられ、見た目は普通に美味しそうですけど・・・。

実食してみました。
・・・・・。
正直、微妙(不味くはないが・・)。ただこれは、鮮度や下処理に問題があったと思う。食べた部位も尾の方だから味はより強めだったのかも。外見はお世辞にも「美味しそう」とは言えないけど、刺身にすればちゃんと成り立つのは、当たり前だけどやっぱりお魚なんだな。
淡白というよりは味のある魚です。名前に「カツオ」とありますが白身魚である点も、味わいに意外性をもたらすのでは?
う〜ん。とは言え、シマガツオの生食は人によってはクセがあり苦手と感じるかも。
ただ、酸っぱくはない!そして決してマズくもない。
確かに酸味は感じられる。それもごくわずかで「言われれば確かに酸味ある?」程度。
事前情報との違いに戸惑いつつ、なぜ酸っぱくなかったのか考えてみました。
魚は漁獲の時期や場所によっても味が変わる
筆者の食べたシマガツオは酸っぱくなかったですけど、ネット上では「酸っぱかった!」というレポートが散見されます。
この違いは何でしょう??
原因はおそらく個体による違いではないかと思います。
例えば、雑食の魚であるメジナはその食性の影響で、とんでもなく臭い個体に出会うことがあります。
僕も過去に、体臭が魚類ナンバー1じゃないかと思うメジナと遭遇したことがあったのですが・・・。
魚は人間がそうであるように、同じ種の中でも個性がそれぞれあります。
特に環境適応力の高い雑食系の魚。
なんでも好んで食べる雑食の魚は、同じ種でも季節や住む場所によって食性が異なる場合があるそうで、その影響が味にも出てくるということはよく言われる話です。
そして環境適応力の高い魚。
極端な話、ドブのような川で生きている魚が味が悪くなってしまうというのはイメージしやすいでしょう。
おそらくこのシマガツオもそうじゃないのかと思います。
食べているもの(または住んでいる場所)の影響で、酸味が強くなるのと、そうでない個体がいるのではないでしょうか。
シマガツオ(エチオピア)の値段や下処理の話
シマガツオ(エチオピア)は一般的には珍魚とされる魚で、釣りの対象魚でもあるそうですが、お魚屋さんとかで売られるのは稀なケースと言えます。
希少な魚だから高価なのかというと、違います。
見た目、名前、そして味の評価が低いことから、とても安価で叩き売りされることが多いです。
筆者は1キロあたり800円で買ったことがあります。激安です。
話を少し戻して、シマガツオの解体の話。・・の前に、とつげきうおのモデルじゃないかと思うくらいのモンスター顔を観察。

口の中、真っ黒なタイプの魚ですね。これはモンスター感が増します。
こわいぞ・・・。
一体どんなものをエサとして食べてきたのか・・・恐ろしや。

ん??

え???

!!!????

びっくりしたヒトデかよ噛み切った人間の指かと思った怖えぇぇぇ!つかヒトデとか食べてるのかわいいな!!
・・・
すみません、取り乱しました。
シマガツオ(エチオピア)のウロコの硬さは最強
シマガツオのウロコはびっくりするほどに硬くて処理しづらかったです。
取り扱いが面倒なところも、値段が安い要因の一つなのかもしれませんね。
ウロコとりで地道に鱗を取り除くよりも、すき引きで処理した方が簡単でしょう。
すき引きが良いと言いつつ、あえて前述の「ウロコ取り」をトライしてみました。
僕も初めて見る魚なので恐る恐る触っていくのですが、普通に鱗を引こうとしたら、

めっちゃくちゃ取りづらい!
「ウロコ取り」ではかなり無理があります。
あきらめて、出刃包丁でガリガリ削るように取るのですが根っこが深くてだいぶ苦戦。これは包丁を痛めるレベル。
ウロコを普通に取ろうとすると、他の魚の数倍の時間がかかりますね。
取った鱗がこちら↓


鱗の形が独特で、頭に近い方の鱗は棒状の形(鱗を何枚か縦に繋げたような)になっており、皮に深く埋没するような造りになっていました。
鱗自体は硬いわけではなく、ただただ取りづらい。根っこが深い雑草のよう。
なぜこのような構造になっているのか、謎の多い魚です。

以前、扱ったことのあるシイラと、ある意味似たような方向性の魚と言えるかもしれない。
ちなみにシイラは「毛」のようなウロコでした。
ウロコの取りづらさはエチオピアが上です。絶対絶対「すき引き」でウロコを取りましょう。
シマガツオはなぜ「エチオピア」と呼ばれる??
シマガツオの気になる名前にも触れます。
冒頭でも書いた通り、シマガツオはなぜかエチオピアと呼ばれているのですが、その由来はいったいどこにあるのでしょうか。
残念ながら正確には不明らしい。その上で、本当かどうか分からないけど一般的に言われている説を紹介しましょう。
昔、日本でシマガツオの漁獲量が増えた時、その当時の日本と親交が深かったエチオピアという国が世間で話題に上がったため、ちょうどそれに肖って付けられた。みたいな話だそうです。
真偽のほどは不明ですが、案外、名前の付け方なんてそんなものかもしれませんね。
ちなみに標準和名である「シマガツオ」とは、「マナガツオ」に姿形が似ているということで魚類学者の命名によるもの。
「シマ」とは「島」のことで、南方で取れるという意味がこめられているそう。
「スズキ目スズキ亜目シマガツオ科シマガツオ属」の一種。
シマガツオ(エチオピア)の不思議な魚体
冒頭で紹介した通り、ドラクエの「とつげきうお」のような不思議な体つきも紹介していきます。





この尾ビレに注目するとこの形、鰆(サワラ)とかマグロにちょっと似ている気がします。オキアジ系にも少し似てますね。
引き締まった固そうな尾ビレは泳ぎが得意な証拠だと思います。(やはり、とつげきうお・・)
シマガツオは焼けば美味しい!
シマガツオの刺身の味はちょっと形容しがたい。
決してマズくはないと思いますが人によっては苦手な人がいるかも。そして鮮度や締め方は大事!これはシマガツオのみならずですが。
マダラのような淡白な味ではなく味の強めな白身魚です。そして酸っぱくはなかった!前述の通り、個体による違いだと思うんですけどね。エサや住む環境の違いによって、魚の味も変化するのでは?ってこと。
ちなみに、火を通して食べるとめちゃくちゃ美味しい魚でした!!刺身で食べるより筆者は好き。
けっこう脂乗ってると思ったんですけどそうでもないところは好き嫌い分かれるかも。もしかしたら個体や時期によっては焼くとパサついてしまう印象でした。
焼いて食べれば文句なしに美味の魚「とつげきうお」、もといシマガツオをぜひ。
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