「青箭魚」という漢字はサゴシまたはサゴチと読みます。
サゴシ(地方によってはサゴチ)とは、サワラという超一般的な食用魚の若魚(わかぎょ:成魚でない半人前の魚)のこと。
成長によって「サゴシ」から「サワラ」へと名前が変わるのは出世魚だからですね。
そして、サゴシ(成魚のサワラも)は白身魚として扱われることがあり、見た目や味も白身魚のそれ。
しかし、サゴシって実は赤身の青魚なのです。
「白身魚のような赤身の青魚」とは、一体どういうことなのでしょうか。
サゴシは青魚なの?【白身魚、赤身魚、青魚の話】
さて、サゴシやサワラを白身魚だとして提供している飲食店があります。
身の色が白身魚っぽいからです。味も、そこまで赤身赤身していなくて、言われれば確かに白身かな?となるでしょう。
が、実はサゴシは(サワラも)身の成分を見ると赤身の青魚に分類されるのです。
青魚アレルギーの方は注意が必要。
白身魚と赤身魚と青魚
そもそも、白身魚、赤身魚、青魚とは何でしょうか。身質についてもう少し詳しく考えてみましょう。
よく、「白身魚は淡白な味で万人受けしやすい」とか、「赤身魚は特徴的な味で好き嫌いが分かれる」とか言われますよね。この白身魚と赤身魚の違いって何?という話です。
まず、シンプルに味が違うということですね。
なぜ味が違うかというと、身(魚肉)に含まれる成分が違うというからです。そして身の成分の違いは、魚たちの生態の違いが大きく関係しているということが言えます。
白身、赤身、それぞれの魚の特徴
例えば、白身魚の多くは、ふだん海の中の岩礁域に身を潜めたり砂地に隠れていたりすることが多いです。(ヒラメやマダイなど)
対して、赤身魚は泳ぎが速かったり回遊魚であったりと、年中動き回っていることが多く、また、早い速度で泳ぐ魚が多いです。イワシやカツオやマグロ、サバなど。
- 白身魚 → じっとしていることが多い
- 赤身魚 → 動き回っていることが多い(泳ぐ速度は早い)
一概には言えませんが、これらの傾向の違いが、筋肉や筋の質や量、身を構成する成分の違いとなって表れているのです。
青魚とは
じゃあ「青魚」とは、どういう魚のことでしょうか?
「青魚」という魚の分け方は、「白身魚」や「赤身魚」という魚のくくりと同列ではありません。つまり、「赤身の青魚」や、「白身の青魚」という表現が成り立ちます。
「青魚」とは背中が青色または黒っぽい色の魚のことを指していて、身質の特徴を指す言葉ではありません。
ちなみに、青魚に対して赤魚という言い方もされます。こちらはあまり一般的な表現ではないかもしれませんが、マダイなどが見た目通り赤魚ということですね。
つまり、サゴシやサワラは白身のような赤身の青魚となるわけです。
めちゃくちゃややこしい。
サゴシ料理!おいしい食べ方紹介(刺身、塩焼き、煮付け)
頭を使っていたらお腹が空いてきたので、ここからは美味しいサゴシの食べ方を紹介していきます。
すでに書いた通り、サゴシは赤身魚です。
しかし、赤身らしからぬその味は、店によって「白身魚」だと位置付けられることもあるほど。赤身か白身か判断が別れる魚は、たくさんいる魚類の中でもサゴシくらいではないでしょうか。
そんな特異な身質を持つサゴシの料理法をざっくりとですが紹介します。
なお、サゴシは皮のうまい魚でもあります。これもぜひ料理に反映させたいところ。
サゴシの刺身(皮付きがおいしい)
まずは刺身。鮮度がよければ刺身で食べましょう!
赤身魚らしく筋肉が多く繊維質かと思っているとびっくりしますよ。時期にもよりますが若魚のサゴシでも、脂が乗っていることが多いです。
”皮”を活かすなら、炙り(焼き霜造り)がおすすめ!
サゴシの塩焼き
本当なら成魚であるサワラの方が美味しい料理です。
しかし、例えば刺身の時期を逃した(鮮度が落ちてしまった)など、塩焼きで十分美味しくいただけますよ。塩焼きの場合も、皮目を香ばしく焼き上げた方が美味です。
バターを使ってフライパンソテーの方が、しっとりと焼き上げることができてパサつかず、コクもプラスされるのでおすすめ。
さらに、少し手間はかかりますが「西京焼き」も定番料理です。味噌ダレに漬け込んで焼き上げる料理です。
サゴシの煮付け
クセの少ない魚なので、湯引きは要らないと思います。若魚なので身が柔らかいですが、次のことに気をつけて料理すれば大丈夫!
- 煮汁は少なめに(身が完全に隠れない)
- 火加減に気をつける(コトコトをキープ)
- 鍋の蓋はせず、クッキングシートで落し蓋
- 長い時間火にかけない(10分〜20分)
お好みで生姜を入れたり味噌煮にしても良し!
食材としてのサゴシのコスパ
サゴシは、魚市場などでは年間を通して売り場に並ぶことが多い魚。気になるコスパは?というと・・、
- そもそも値段が安い
- 頭が小さく内臓系も大きくない(可食部が多い)
- 細長い体のわりに身に厚みがある
と、歩留まりの良い(コスパの良い)魚とされています。
「歩留まりが良い」とは、丸ごと魚1匹から、骨や腹わた等を取った時の可食部が多い時に言われる言葉
サゴシの成魚であるサワラは、昔から日本の代表的な食材でした。日本だけでなく、お隣の韓国をはじめ世界的な食用魚でもあります。韓国産のサワラは、日本の魚屋でもたまに見かけますよ。
出世魚?地方名?ややこしい!名前が七変化する魚たち

40センチは軽く超える体長。サゴシは長い魚です。しかし繰り返しますが、これでまだ若魚の状態。この後もさらに大きく成長して、成魚となれば1mを超えるほどの大きさに。
サゴシは出世魚
日本では同じ魚でも成長度合いで呼び名が変ることがあり、このような魚を出世魚と言うのですが、このサゴシもそう。
上でも書いた通り、サワラの若魚の時の呼び名となります。サゴシが成長してさらに大きな成魚「サワラ」となるわけです。
サゴシの呼び名の変化 40〜50㎝でサゴシ(サゴチ)→ 50〜60㎝でナギ→ 60㎝以上をサワラなぜ「出世魚」の概念が必要なの?
そもそも、なぜ「出世魚」という、一見すると面倒そうな概念があるのでしょうか?
理由はスズキの記事でも少し触れています。
例えば、漁業で同じ魚の子供と大人を一緒に捕まえた場合、大きさ、色、形などが全く違うことが多く、その2匹が全く異なる種類の魚に見えたりします。あるいは、同じ魚でも子供の時と大人の時で料理する方法や価値が変わるため、間違いのないよう分類しなければならないケースもあります。
つまり、別の魚のように扱う理由やメリットはあるということ。
逆に、2つの見た目の違う魚が、学術的に同じ種類の魚かそうでないか、商売を行う上ではあまり重要ではないことがほとんどなのです。
地方名が絡むと加速する「ややこしさ」
何度か書いていて繰り返しになりますが、サゴシの呼び方が、サゴ“チ”と変わるケースがあります。
地方によって呼び名が変わるのです。出世魚で変わるパターンとは別に、地方でも呼び名が変わる。めちゃくちゃややこしいです。
漢字もたくさん
ちなみにサワラを漢字で書くと、“鰆”。または“狭腹”と書くケースもあり、一つの名前に対して複数の漢字が存在することも、また輪をかけてややこしい。
名称の統一が必要か?
もっとシンプルにすれば合理的であるのは確かです。
しかし、同じ魚なのに呼び名や漢字がたくさんあるのって魚大好き日本人「ならでは」ですし、これも文化なんじゃないかなと僕は思って良しとしたいです。
地方名の中には、これは秀逸だなぁというのも多々あり、調べる楽しみもありますよ。
サゴシの特徴的な顔
サゴシは肉食魚です。

凶暴な顔に鋭い牙。気をつけないと怪我しますよ!この牙で、主に小魚類を食べているようです。鳥のクチバシのような口の形をしていますね。
サゴシ(青箭魚)は白身のような赤身の青魚
白身魚なのか、赤身魚なのか、それとも青魚なのか、ちょっと物議を醸す魚は、おそらくサゴシ(サワラ)くらいではないでしょうか。
中性的な特徴を持つ魚なので、それぞれの身質の代表的な料理がどれでも合うのかもしれませんね。
今回は、サゴシについてダラダラと書きました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
最後の最後、サゴシの通販情報を載せときます。