コブのある魚、コブダイをご存知でしょうか。
エヴァの量産機かと思うほどインパクトのある顔面をした海水魚です。
他に類を見ない顔面に加え、成魚で大きいものは1mを越すという大型魚で寿命も長く、さらに食用としても知られています。
様々な側面を持つコブダイですが、やはり一番の特徴と言えばその大きなコブでしょう。
頭が隆起してまさに「瘤(コブ)」。名前の由来もそのコブから来ているようですね。

ここで、誰もが思うであろう疑問をあえて書きます。
「コブダイのコブの中身って一体どうなってるの?」
さらに言えば、
「そのコブ、一体何の意味があるの?」
と言うことで、コブダイの頭を半分に割ってみて実際に調べてみました。
コブダイのコブの中身は何?超意外な「アレ」です
考えれば考えるほど不思議な見た目のコブダイ。なぜコブが必要なのか?中身はどうなっているのか?
コブダイのコブはなぜあるの?
一つ有力な説を紹介します。
後にも書きますが、コブダイはハーレムを作る珍しい習性を持ちます。つまり複数のメスをかこうのです。
ハーレムを作る時にはオス同士が戦うのですが、その時の優劣を決める役割があるとされるのが、「コブの大きさ」だと言われています。
ハーレムを持つオスへの挑戦や、逆に、挑んでくるオスを撃退する戦いがコブダイの世界では繰り広げられており、その際、まともに戦ってしまうと一方が死んでしまうこともあるかもしれません。
コブの大きさで優劣が決まるのなら、種の繁栄という観点からも合理的と言えますね。
ちなみに、コブダイのコブは歳を重ねるごとに大きくなり、より長く生きているコブダイの方がハーレムを持ちやすいそうです。
コブの感触
とりあえず、中身を調べる前にコブの感触を確認しておきましょう。

意外なことに、その感触は「プニプニ」でした。まさか柔らかいとは!コブの中身は頭蓋骨ではなさそうですね。
頭蓋骨でないなら一体・・・。
コブダイのコブの中身
頭を半分に割ってみました。

下画像の赤丸部分が、ちょうど頭の隆起したコブ状の部分。

コブの正体は、ゼラチンのようにブヨブヨとした謎の物体。
このゼラチン状の物体は「脂肪」です。だから柔らかい感触だったのですね。
でもなぜ脂肪が・・・。
もう一つのコブの意義とは?
なぜコブがあるのか?
脂肪の塊に何の意味があるのか?
その答えは残念ながら正確には分かっておらず、仮説で有力なものは先に紹介したオス同士の縄張り争いに使われるというものです。
あるいは、「捕食者から身を守るため」とする説も存在します。
コブの存在意義には諸説あり、物理的な攻撃から身を守るための”クッション”のような役割ではないかという考えですね。
大型のコブダイにも外敵はいるでしょうし、急所を守ると言う意味では頭にあるコブはヘルメットのような役目があるのかもしれませんね。
「雄性先熟」のオスだけが”コブ”を持つ
「雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)」とは、最初はみんな雌(メス)だけど、成長とともに雄(オス)になるケースがあるという特徴のこと。
実は、この「雄性先熟」は魚の世界では割と多く、例えばクロダイやその近縁の種もこの特徴を持っていたり、魚類の中まで探せばそれほどレアケースというわけではありません。
そして、コブダイの”コブ”は、雄だけが持つ特徴なのです。大型化するのもオスだけ。
メスも多少デコッパチですが、オスほど目立つものではありません。外見がオスとメスであまりに違うコブダイは、別の種として考えられていたほど。
オスは複数のメスを囲ってハーレムを作る
先にも書いたように、コブダイ のオスの珍しい特徴として「ハーレムを作る」というものがあります。
1匹のオスがメスを何匹も囲って、それぞれのファミリーを作るわけです。まるでライオンのよう。
オス同士の縄張り争いもあるらしいです。
繰り返しますが、縄張り争いで重要なのがオスだけが持つ”コブ”の大きさだと言われています。
より強いオスは”コブ”も大きい。つまりコブがなぜあるのかと言うと、オス同士の優劣に使われているのではないかと考えられているのです。
”コブ”だけじゃない!コブダイの魅力
特徴的なコブに目を奪われがちですが、他にも「なんかスゴそう」なコブダイの特徴を紹介していきます。
見た目通りの寿命の長さ
まだまだ分からない部分も多いコブダイですが、その寿命は少なくとも20年はあると言われています。
一説によると、(定かではありませんが)50年近いと言う話もあるくらい長寿な魚。
老成した個体は、岩礁の影でじっと動かずに暮らしていて、まさに海のヌシのような威厳を感じられそうです。
噛む力が超強力
この歯をみてください。
噛む力が相当強く、甲殻類や貝類をバリバリと噛み砕いて食べてしまいます。人間も間違って噛まれたら大怪我するでしょう。
白身の美味しい魚
コブダイは、こう見えて美味しい魚。たまにお魚屋さんで鮮魚として売られていたりします。
歩留まりも良く値段も手頃なことが多いので、漁獲量が少ないことを除けば、コスパの良い魚と言えますよ。

身質は、硬くはないけど弾力のある白身で、ハタに少し似てる感じ。
体の表面は、ヌメリが強く、下写真のようにウロコ引きでこすると粘液が泡立つほど

【考察】コブダイのコブの意味
コブダイのコブの中には脂肪が詰まっていました。
その役割は、オス同士の縄張り争いの時の優劣に使われるという説や、外敵からの攻撃を防ぐために使われるという説が有力なようです。
ちなみに、コブダイのメスを引き寄せるために使われるってことはないですかね?
動物界ではしばしば、オスによる身体的なアピールポイントを使って、メスへの求愛行動をとるケースが見られますよね。
コブダイのコブも、もしかしたらメスには魅力的なものに見えるのかも?