【歩く魚】胸ビレを使って海底を歩くホウボウの謎

ホウボウ(方々) 魚介の雑学

「歩く魚」と聞くと、魚人とか架空の生き物を想像する人が多いと思いますが、意外なことに日本の身近な海に生息する「ホウボウ」という魚が海の底を歩くというのです。

「魚なのに足があるということ?」

「なぜ、泳がずにわざわざ歩くの??」

想像を巡らすと少し、いや、かなり不思議なホウボウの生態。

気になったので調べてみました。

ホウボウが「歩く魚」と言われる理由

歩く“魚”と言いつつ、実は爬虫類の仲間なのか?とも思いましたが、ホウボウはれっきとした魚類で「カサゴ目ホウボウ科」の魚。決して足が生えているわけでも、実は爬虫類だということでもありません。

蛇足ですが、ホウボウは歩く以外にも変わった特徴を持ち、それが鳴く魚であるということ。以下の記事で解説しています。

それにしても歩いたり鳴いたり、どうなっているのでしょうか、このホウボウという魚は。

とりあえず本題の「歩く謎」に話を戻します。

ホウボウが海底を歩く理由は、その生活スタイルに関係すると言われています。

胸ビレで歩く魚「ホウボウ」

生活スタイル、とりわけホウボウの食事の仕方が歩行する理由のヒントとなります。

ホウボウのアヒル口

あひる口で愛嬌たっぷりの顔。

魚の口の形は「受け口」が多く、その理由は自分より上方にいるエサを捕食するためですが、ホウボウは逆で、自分より下方、すなわち砂の中に潜む小さな甲殻類やゴカイなどの環形動物を吸い込んで捕食します。

ホウボウの生息域は主に海底。そこでは発達したヒレを使い海底を器用に歩くホウボウの姿が見られます。

何をしているかというと、砂に隠れたエサを探しているのです。つまりエサを探す行動が「歩行」の理由だということ。

足っぽく見えた部位は、実は発達した胸ビレの一部だったのですね。

ホウボウの足(発達した胸ビレ)
ホウボウの足(発達した胸ビレ)

細くて頼りない気もしますが、全部で6つの鉤爪のような足のようなパーツ。確かにこれを使って歩けなくもなさそう。

足のように進化した胸ビレの先端は感覚器官になっていて、砂の中に潜んだエサを察知することもできるそうです(ひょっとしたらエサを探してただけで、それが歩いているように見えただけなのかも?)。

ホウボウの足の別の用途として、潮流に流されないよう船の錨(イカリ)みたいに海底に体を固定する役目もあるとされています。

歩くためだけじゃない!ホウボウの胸ビレの使い方

胸ビレを使って海底を歩くホウボウ。

足のように発達した胸ビレとは別に、同じ胸ビレをまた別の用途にも使います。

ご覧のように、ウチワのように大きく変な形をしたのは胸ビレ。足のように発達した胸ビレの後方に用途の違う(形も違う)胸ビレが繋がっているのです。

まるで羽のよう。色鮮やかで大きな胸鰭は、上からの捕食者を驚かせる効果があるとされます。

(写真は締めた状態のホウボウなので色鮮やかとは言えませんが、生きている時の胸鰭はものすごくキレイです。)

ホウボウ以外にもいる「歩く魚」

そもそも歩行魚は「水陸両用」の魚のことを言うのが一般的みたい。

ホウボウと似た魚「カナガシラ」も同じように海底を歩きますが、ホウボウもカナガシラも陸上に進出しないから「水陸両用」とは言えないでしょう

水陸両用の歩行魚と言えば、ハゼ科のいくつかの種類が有名で、ムツゴロウやトビハゼは干潟や水辺を胸ビレを使って歩きます。

マニアックなところでは、マモンツキテンジクザメ(エポーレットシャーク)は胸ビレと腹ビレを使って不器用ながら潮の引いた岩場を歩行するらしいです。

ノーザンスネークヘッドというライギョの一種は原始的な肺を持ち、陸上で数日間生きることができる魚。陸ではヒレを使って歩いて移動します。

一方、ホウボウと同様に水中のみで歩く動作をするのはアフリカハイギョの一種。やはり胸ビレを器用に使って海底を“歩く”とのこと。

ちなみにハイギョは太古からほとんど姿を変えない生きた化石的な存在で、生物の歩行の起源はもしかしたら水中にあるかも?という仮説もあるそう。

水陸両用なのに歩きが下手な魚もいます。東南アジアやインド原産のウォーキングキャットフィッシュ(ナマズの一種で別名クララ)は、空気呼吸することができ水場から水場へ陸上を移動するのに、その際は歩行と言えないような、のたうち這いずり回る動きで移動するようです。

なお、オオサンショウウオは泳いだり歩いたりする生き物ですが、魚類ではなく両生類なので「歩く魚」とは言えません。

ホウボウの名前は“歩く魚”に由来する

「ホウボウ」の名前の由来を紹介します。

諸説ありますが、海底を「方々歩く」という特徴から来ているとの説が有力だそう。

また、「這う魚」という意味の言葉が転訛して、「ホウボウ」となった説や、鳴き声が「ホウボウ」と聞こえることからついたという説も。

日本以外の国でもホウボウを見ることはできます。

中東では、胸鰭を広げた姿から「飛行機」や「凧」を意味する名前で呼ばれているとか。

英名だと「Searobin(「海のコマドリ」の意)」と呼ばれるなど、やはり特徴的な胸ビレから名前が付くケースが多くの国で共通しています。

胸ビレで言うと、驚きの特徴を持つ魚は他にもいて、有名なのがトビウオ。

トビウオは発達した胸ビレで水面を滑空することができます。

同じ胸ビレでも、海底を歩いたり海面を飛んだり魚類の多様性は考えてみればユニークですよね。

他にもトクビレ(ハッカク)とか、鰭(ヒレ)の模様がホウボウと共通点が随所に見られて面白いですよ。

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