「あごだし」は“トビウオ”という海水魚から作る出汁の一種です。
トビウオは羽のようなヒレで滑空する魚として有名ですが、「食材」として見れば、少ないながら全国的に流通し、刺身や焼き魚、煮物のほか加工品の利用が多い魚。その代表格が「あごだし」というわけですね。
では、「あごだし」の意味とは?なぜそのように呼ばれるのかを調べてみました。
「あごだし」の「あご」って何?
トビウオは「ダツ目トビウオ科」に属する赤身魚で、寿司ネタならば「青魚」や「光り物」に分類されます。生息域は温暖な海の沿岸、表層近くに群れで見ることができ、全長は30〜40cmほどにまで成長します。
トビウオが「飛ぶ魚」であることはあまりにも有名でしょう。その仕組みや理由については別の記事で解説しています。

飛ぶから面白くて珍しい魚というだけでなく、トビウオはれっきとした食材でもあります。
筆者が実際に捌いて食べてみたところ、骨が多く脂の少なめのサンマのような身質でした。普通に美味しかったです。
刺身でも美味しいですが干物や加工品の方が有名。とりわけ「あごだし」は商品化されるなど美味しい出汁として全国的な知名度です。
「あごだし」の“あご”はトビウオのこと
「あごだし」は“アゴ出汁”で、“アゴ”はトビウオのこと。つまりトビウオを使った出汁のことを言います。
ではトビウオの別称、「あご」の由来とは?
諸説あり“あごが落ちるほど美味しい”ことが語源との説が有力で、確かなことは分かっていません。よく言われる由来は次の4つ。
- 顎(あご)が落ちるほど美味
- 身が硬く、食べるのに顎(あご)を使う
- トビウオ自身のアゴが出ている
- トビウオの学術名「Cypselurus agoo」から
他に真偽不明情報で、トビウオの精子を昔から産地で「あご」と呼び、転じてトビウオ本体もそう呼ぶようになったという話もあります。
筆者の感覚としては、身が硬いというのはあまりピンときません(トビウオは赤身の小さい魚だからむしろ柔らかい)し、アゴが出ているというけど魚はだいたい受け口の種が多く、トビウオが極端にシャクレてるわけじゃないので違和感があります。学術名の「Cypselurus agoo」は博物学者シーボルトの命名で、西日本での「アゴ」の呼び名を「agoo」としたらしい。つまり学術名よりも地方名が先。
「アゴが落ちるほど美味」という説が確かに一番それっぽいですが、トビウオは美味しいけど顎が落ちるほどという表現が少し誇大すぎのような気が個人的にはします。トビウオの出汁に対しての表現ならしっくり来るので、「あごだし」が最初で、転じてトビウオ本体も“あご”と呼ぶようになったということなら納得はできます。
実は個人的に最も真実味を感じるのはトビウオの精子がアゴと呼ばれてたことが由来という話。突拍子もない分、逆にリアルに感じてしまいます。
“あごだし”の作り方を簡単に説明。「焼きあご」を漬け置き、煮出し、火を止めさらに漬けおきし、最後にこせば完成。「焼きあご」というのは炭火で焼いてから天日干ししたトビウオのことです。
「とびっこ」や「一夜干し」も有名
「とびっこ」は、トビウオの卵のこと。イクラに比べると、色は似ていますが一粒のサイズはかなり小さく、直径1㎜前後。数の子(ニシンの卵)より少しだけ大きいくらいのサイズ感です。
プチプチとした食感がなんとも贅沢。高級食材と言って良いでしょう。
キラキラと明るい赤色は、「ゴールデンキャビア」と呼ばれることも。ただし、キャビアの粒の大きさは直径3㎜前後が一般的。
魚卵で有名な食材といえば、ハタハタの「ブリコ」や、スケトウダラの卵巣「明太子」など。イクラや数の子も忘れてはいけません。
トビウオは刺身や焼きで食べることも多いですが、オススメの食べ方は「一夜干し」!トビウオの一夜干しのやり方で紹介しています。
「トビウオに似た魚」の記事で、トビウオに似てるとされるボラやイワシとの違いも。
「トビウオ」は「トビウオ科」に属する魚の総称を指す場合があり、トビウオ科には、今回の記事で紹介している「トビウオ」の他、「ハマトビウオ」や「ツクシトビウオ」なども属し、これらも食用とされています。
ちなみに、トビウオの種類を世界的に見ると、全部で50種類ほどに。・・意外に多くてビックリですね。
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