トビウオは海面から飛び出て滑空することができる“唯一無二”の海の生き物です。
けっきょく生き物として何類なの?となりがちな存在ですが、その正体はあっけなく、サンマとかと同じ「ダツ目」に類するお魚です。
魚類全体を見渡してもけっこう特殊な魚であるにもかかわらず、見た目は割と地味なので他の魚と混同しがちなトビウオ。
よく間違われがちな、トビウオに似た魚とその違いをいくつか紹介します。
【トビウオに似た魚】イワシ、ボラ、ハタハタとの違い
トビウオは見た目が地味です。ゆえに似た魚が多くややこしい存在。
もちろんトビウオの“羽”、つまり胸ビレを広げれば一目瞭然ではあるものの、普通は閉じて畳んでいるので分かりづらいです。

イワシかな??
いや、トビウオです。

トビウオに似てると言われがちな魚をピックアップしました。
これらは、そもそも同じ“魚類”ではあるけど厳密に見れば生き物の属性が異なります。
- トビウオ → ダツ目ダツ亜目トビウオ科ハマトビウオ属
- イワシ → ニシン目ニシン亜目ニシン科マイワシ属
- ボラ → ボラ目ボラ科ボラ属
- ハタハタ → スズキ目ハタハタ科ハタハタ属
イワシとトビウオの違い
イワシはニシン科でトビウオはトビウオ科ですから生物としての成り立ちがけっこう違います。
しかし、トビウオと見た目が一番似ているのはイワシだと個人的には思うところ。
正直、少し観察すれば違いはたくさんありつつも一番違う部分は「尾びれ」じゃないでしょうか。


実はトビウオの尾ビレは特徴的で、下の部分が上よりも長く伸びています。対するイワシは上下が均等なので、ココを見ればすぐにトビウオだと判別できるでしょう。
ハタハタとトビウオの違い
冷静に見れば、ハタハタとトビウオの共通点は「サイズ感だけ」と言えるほど、けっこう違う魚。しかし、しばしばお互いを言い間違えたりするケースが一定数あるようです。

顔の構造も異なってハタハタは極端に受け口の魚ですし、青魚ではなく白地に褐色で身質も白身(トビウオは赤身の青魚)。
各部のヒレの形も違うし、というか何もかも違います。
じゃあなぜ「ハタハタとトビウオ」の入れ違いが起こるかというと、いくつかの理由があるのではないでしょうか。
- ハタハタも飛び跳ねることがある
- 「ぶりこ」と「とびこ」
- 地魚として似たような立ち位置
ハタハタとトビウオの形はけっこう違うと書きました。しかしハタハタも魚ですので海から飛び跳ねることはありますし、もちろんトビウオのように滑空などしないけど、産卵期は大挙して浜辺にまで押し寄せ海面から飛び跳ねる光景も見られるそうです。
人の目につきやすいことと、バチャバチャと海から飛び跳ねる姿を遠目から見て、「トビウオ?」と勘違いする人はいるのかもしれません。
そして一番大きな理由は類似した特産品ではないでしょうか。
ハタハタの「ぶりこ」とトビウオの「とびこ」。どちらの魚も卵が美味で珍味とされ、全国的な知名度を獲得した食材となった部位を持ちます。この共通点が、“ぶりこ”のハタハタ、“とびこ”のトビウオを入れ違い認識してしまう原因。
最後に、「ぶりこ」や「とびこ」以外にも、ハタハタは「しょっつる」、トビウオは「あご出汁」と、もともと郷土食材だが全国的に有名になったという、類似した加工品モデルを持つ地魚。干物も有名です。
「あご出汁ってハタハタだっけ?トビウオだっけ?」となるケースが混乱を呼ぶのでは?と想像します。
形は違うけど間違いが起こる原因のウラに、類似した特産品や加工品が存在していたのではないでしょうか。
ボラとトビウオの違い
ボラとトビウオの間違いも不思議で、両者の共通点は少ないです。



生物学的に違う種であることはもとより、ボラは白身でトビウオは赤身ですし、体のサイズも違ってボラはだいたい50cmまで大きくなるのでイワシよりふた回りも大きい魚です。
ハタハタとトビウオの類似点の節で書いた特産品については、ボラの卵を利用した“カラスミ”は有名ではあります。しかし、ハタハタの“ぶりこ”とは、高級度とか認知度とかちょっと違う感じ。
じゃあなんでボラとトビウオが似てると言われるか考えると、たぶんそれは「体型」だと思います。
両者とも、数いる魚種の中でめずらしい「逆三角形」の体型を持つ魚。つまり、断面が文字通り逆三角形ということで、魚類の中で楕円形が多数派の中において、数少ない特徴がボラとトビウオが似ていると言われるわけです。
ボラとトビウオは何もかもが違いますが、同じ逆三角形の体型を持つ数少ない魚ということ。
ボラとイワシの違い
ちなみにボラとイワシはどうでしょうか?
これも共通点を探すほうが難しいですが、イワシの種類の中には「ボライワシ」と呼ばれる種がいて、名前の通りボラに似ているイワシが存在します。そもそも成長のある段階を切り取ると、両者は似ているのかもしれません。
他のハタハタやトビウオにも言えますが、稚魚や幼魚の段階でどの魚を見分けるのは、多くの魚で困難となります。