「飛ぶことのできる魚」でお馴染みのトビウオ(飛魚)は、そもそも何故そんなことをするのでしょうか?
広い海の中だけで済みそうなものを、あえて海を飛び出すような行動は冷静に考えてみるとちょっと不思議です。
魚なのに「海」という世界を飛び出してしまうという発想は唯一無二。非常に興味深い魚というわけです。
【魚なのになぜ飛ぶ?】トビウオ(飛魚)の不思議
トビウオは比較的暖かい海の沿岸部、表層近くに群れで暮らすことが多い魚。全長は30〜40cmほどで主食はプランクトンなど。“飛ぶこと”を除けばサンマやイワシなどと似た生態を持つようです。
実際、「ダツ目トビウオ科」に属するので、「ダツ目ダツ上科サンマ科」のサンマとは親戚のような間柄と言えるかもしれません。
あまりイメージがないかもしれませんが、トビウオは食材として古くから認知されています(筆者が捌いてみると、赤身の青魚で骨が多く脂の少なめのサンマのような身質だった)。
とは言え、やはり「飛ぶ魚」のイメージが強すぎてサンマやイワシとかと同列に考えにくいのも正直なところ。
実は「飛ぶ魚」と言っても、トビウオは鳥のように羽ばたいて上昇したりはできず、水面に勢いよく飛び出して、翼のようなヒレを広げて滑空するメカニズムのようです。
100m程度なら普通に滑空するようで、羽のような胸ビレで空気抵抗によるブレーキをかける姿も良く見られます。
でも、なぜそんなことするのでしょうか?
トビウオが飛ぶ(滑空する)理由
トビウオが胸ビレを広げて滑空する理由は、マグロ、カジキ、シイラ、イルカなどの捕食者から逃げるためと言われています。
鳥のように羽ばたいて上昇するのではなく、風に乗って滑空するグライダーのような動きで海面から2〜5メートルくらい浮いた空中を真っ直ぐ移動し、翼のようなヒレを器用に動かして方向転換や急停止(急下降)もできます。
トビウオの翼(胸ビレ)は明らかに鳥類のものとは違い、蝶やトンボなどの昆虫のようにツルっとした触り心地で、昆虫のものよりは破れにくい厚さでした。


よく見ると腹ビレが後ろのほうに付いていて、広げると飛行機の尾翼みたいに羽が4枚になる感じ。

胴体は真正面から見るとちょっと逆三角になっていて飛行機っぽい。空気抵抗をすくなくするための進化でしょうか。
魚から逃れて空中へ飛び出したトビウオ。しかし空中は100%安全地帯ではありません。海鳥にとっては飛んで火にいる夏の“魚”ということで、鳥からも追われる立場となってしまいます。
トビウオは海鳥から逃げるために、飛ぶ向きを変えたり急降下したりして逆に海の中へ飛び込んだりしなければなりません。
空中で滑空する特徴を利用した漁方もあり、飛んでるトビウオに皿のようなものを投げて気絶したトビウオを拾うやり方があるそうです。
羽を手に入れたからとて無敵ではなさそうですね。
トビウオが当たると痛い?
トビウオが空中滑空する時の速度は50〜70キロくらいだそうです。
車の速度を考えるとかなり早いように思えます。しかし大谷翔平選手の打球速度が180キロとかで、野球のボールに関しては打球が当たって即死とかは想像しにくいところ(もちろん当たりどころによってはヤバい)。
質量とかでも危険度は変わるでしょうから何とも言えませんが、20センチほどで1kgにも満たないトビウオが人間の体に当たっても、「痛っ!」くらいで済みそうです。
しかし洋上で船の上とかでトビウオに突撃されることを想像すると、海に落ちるなど2次的な事故に繋がるかもしれないので、当たった時の痛さだけでは語れないリスクもあるでしょう。海の上で魚にぶつかること自体が想定外すぎてパニックになるかもしれませんし、侮れません。
トビウオとは違いますが、同じダツ目の仲間には口の尖った体の大きな種もいて、海面から飛び出してきた魚が首に刺さって重傷を負った釣り人もいたり、ダツ目はけっこう突っ込んでくる魚として世界的に有名っぽいです。
トビウオの種類
「トビウオ」という呼び名は「トビウオ科」に属する魚の総称を指す場合があり、トビウオ科には、今回の記事で紹介している「トビウオ」の他、「ハマトビウオ」や「ツクシトビウオ」なども属していて、これらも食用とされています。
ちなみに、トビウオの種類を世界的に見ると、全部で50種類ほどに。・・意外に多くてビックリです。
トビウオはイワシやサヨリなどと同じ赤身の青魚。
刺身で食され焼いて食べることも多い魚ですが、中でもオススメの食べ方は「一夜干し」ですよ!
トビウオの一夜干しのやり方で紹介しています。