“タイノエ”をご存知でしょうか?海には多く寄生虫がいますが、その中でも突出して興味深い生き物です。

マダイをさばいていたら
口の中に大きめのダンゴムシみたいなの
入ってました!助けて!
落ち着いてください。それこそがタイノエという生き物。鯛(マダイやチダイなど)の口の中で養分を得て暮らす寄生虫なのです。
今回は、タイノエのユニークな寄生スタイルや、処理の仕方、食中毒リスクについて書いていこうと思います。
まず最初に、取り急ぎタイノエの安全性と見つけた時の処理方法を先に書いておきます。
- タイノエの安全性:無害!寄生されてた魚およびタイノエ本体も食べれます!(要加熱!)
- タイノエの処理:つまむなどして取り除きましょう。
見つけたらつまんで取り除くだけで良いです。
誤って食べてしまっても人間には無害。ただし、タイノエを食べる時は火を通すべきです。ちなみに食べる人はなかなかマニアックだと思います。
結構大きいので、最初に見たときはビビってしまいますが、どんな生き物なのかちゃんと分かっていれば、急に登場しても焦らずに済みますよ。
鯛(マダイやチダイ)の寄生虫「タイノエ」とは?
タイノエは、鯛(マダイ、チダイが多いと思う)の口の中に寄生し、宿主の体液をチューチュー吸って暮らす寄生虫です。
寄生虫というと糸状のシンプルな形を想像しますが、タイノエはなんだか虫のようにも見えます。今回は、一風変わった海の生き物の処理方法、生態を紹介していきます。(実は縁起物って・・、本当?)

タイノエの処理方法と安全性
タイノエの処理方法は、見つけたらつまんで取り除くだけ。そもそも人間には無害な寄生虫です。
火を通していればタイノエを仮に食べてしまっても大丈夫です。タイノエが取り付いていた「宿主」である魚も、もちろん食べて大丈夫ですし味の変化もほとんどありません。刺身で食べても平気です。
中には、タイノエ本体を積極的に食べに行く人もいるほど。ちなみに筆者はタイノエを食べたことないので、おいしいかどうかは不明(エビっぽい味らしいですよ)。古来、日本の一部の地域では普通に食べる文化があったようです。
とにかく、見た目のインパクトは大きいけど、遭遇しても焦らず処理しましょう。「つまんでポイ」でOKです。
ただし、寄生虫の中には食中毒を引き起こす種類もいるので、魚介類を食べるときは、鮮度には十分気をつけてください。
タイノエの寄生の仕方
タイノエは、いかにしてタイに寄生するのか?
まず、餌として宿主に食べさせるなどして口内に侵入します。
タイ(鯛)の餌だから「鯛の餌(タイノエ)」というわけですね。
口の中はせまいので宿主の舌を食べるなどして除去し、空いたスペースに居座るという「ちゃっかり者作戦」で寄生完了。・・・エグ。(汗

タイノエが寄生している様子を奥から見た様子が下の画像。
見る人によってはキモいと感じるかもしれませんので、グロ画像に耐えられる方は画像リンクをクリックの上ご覧ください。

宿主であるマダイの顔と大きさ比較が分かるように並べてみました。

寄生虫といえば、アニサキスも有名(こちらは危険性あり)ですが、タイノエには寄生虫にありがちなニョロニョロ感がありません。
タイノエは等脚目(ワラジムシ目)に属し、ダンゴムシやフナムシなどと同じ仲間。しかし、その生活方法は寄生虫そのもの。

タイノエを見つける時、上の写真のように大小2対の個体と遭遇するケースが多いです。おそらく”つがい”なのでしょう。
大きい方のお腹は「育房室」がふっくらと目立っています(つまり大きい方がメス?)。
ちなみに、タイノエは天然モノのマダイに寄生することが多く、養殖の鯛にはほとんど寄生しません。(絶対に寄生しないとは限りませんが)
寄生された個体は「タイノエ症」と呼ばれますが、無症状であることが多く寄生されたまま共生することがほとんど。しかし、栄養失調に陥ったり、若いうちに寄生されると骨格に異常が生じることもあるようです。
タイノエの仲間
タイノエの正体とは?調べてみると、タイノエは「ウオノエ」という大分類の中に存在するという位置づけ。
「魚の餌(ウオノエ)」の中の、タイに寄生する「鯛の餌(タイノエ)」というわけですね。昔は「鯛の喉虱(のどしらみ)」とも言いました。
等脚目(ワラジムシ目)の仲間であることは既に書いたとおり。
他に、「フグノエ」や「トビウオノエ」のようにバリエーションがいて、その生態はまだ不明な点も多いとのこと。
ウオノエの種類によっては、寄生する場所も口の中とは限りません。エラに付いたり、下の写真のようにあからさまなやつもいるみたいです。

出典:wikipedia
ある日、クロダイを捌こうとしたら、いました。


差し詰め「クロダイノエ」といったところでしょうか。
完全に擬態ですね。ウオノエはまだまだ謎の多い生き物です。


【縁起物】タイノエは「鯛の九つ道具」の1つ
タイノエはその昔、「鯛之福玉(たいのふくだま)」と呼ばれ珍重されたとか。
真鯛には、マダイの鳴門骨をはじめとした「鯛の九つ道具」と呼び縁起が良いとされる体の部位があります。
9個ある「鯛の九つ道具」は以下の通り。
- 鯛石(たいせき)
- 鯛中鯛(たいちゅうのたい)
- 大龍(だいりゅう)
- 鍬形(くわかた)
- 小龍(こりゅう)
- 三ツ道具(みつどうぐ)
- 竹馬(ちくば)
- 鳴門骨(なるとぼね)
- 鯛乃福玉(たいのふくだま)
主に細かい骨など(魚の形をした骨とか)なのですが、実はタイノエも「九つ道具」の一つに数えられるのです。
まさかおめでたい寄生虫だったとは・・・。
“鯛の九つ道具”を持っていると、物に不自由なく、福禄(幸福)を得られるそうですよ。
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