「ホッケ」にアニサキス?【魚の寄生虫の話】

魚介の寄生虫

居酒屋メニュー「ほっけの開き」でおなじみの「ホッケ」。多くが干物などに加工される魚として知られます。

火を通して食べることが一般的なお魚ですが、市販で安く購入したものなどに「寄生虫がいた!」とショック体験をした人もいると思います。

ホッケに寄生虫を見つけたという話で必ず聞かれるのが、「アニサキス」という名前の寄生虫。

アニサキスは大手メディアで取り上げられることも多く、魚に詳しくない人にも知られる存在。そもそも寄生虫らしい形状(ヒモ)とその大きさから、目につきやすい寄生虫なのです。

「ホッケにアニサキスみたいなやついたけど、焼いて食べれば大丈夫?」

「ホッケの干物に寄生虫っているの?」

・・・

今回はホッケに散見されるアニサキスをはじめとした寄生虫についての話です。

ホッケにアニサキス?干物は安全?

ホッケは「カサゴ目アイナメ科ホッケ亜科ホッケ属」の魚。高級魚「アイナメ」の仲間でありながら、見た目はマダラにも少し似ています。(ホッケの生態や面白い名前の由来についても記事にしてますので良ければ覗いてみてください)

ホッケとはどんな魚か?深海魚なのか、それとも・・・。
ホッケは深海魚なのか?アイナメの近縁種であり、干物が有名な魚「ホッケ」とはどんな魚か?

ホッケは高級魚アイナメの仲間ということで、干物だけでなく刺身や煮付けでも美味しい魚であることはあまり知られていません。

そもそも鮮魚の状態で丸のまま売られていることをあまり見ませんよね。その理由は、ホッケのほとんどが加工品に回されるからなのですが、ホッケには寄生虫による食中毒リスクが少なからずあり、鮮魚の状態で取り扱うのは難しい魚だからとも言われます。

そのホッケに見られる寄生虫。アニサキス。・・・・ではなく、実は・・。

ホッケの寄生虫は「アニサキス」と「シュードテラノーバ」

生きている時のホッケの内臓には、高確率でアニサキスおよびシュードテラノーバという寄生虫がいます。筆者の経験上、ホッケに関してはアニサキスよりシュードテラノーバのほうが多い印象です。

アニサキスとシュードテラノーバはそれぞれ違う種の生き物ですが、どちらもアニサキス科の寄生虫で、「寄生虫による食中毒リスク」という観点で見ればどちらも同じようなものと言えます。見た目もほぼ一緒。

厳密には別の生き物ですが、両者を一緒くたに「アニサキス」と呼んでも間違いではなく、違いを意識する必要はあまりないでしょう。(アニサキスとシュードテラノーバの違いについても詳しく書いています)

以下はホッケの身から生きたシュードテラノーバを発見した時の動画。

動画を見てもらうと分かりますが、シュードテラノーバが、本来寄生するはずの内臓ではなく身の方から摘出されています。

このまま身を生食して、生きたままシュードテラノーバがヒトの体内に入ってしまえば、食中毒(アニサキス症またはシュードテラノーバ症と呼ばれる)を発症してしまう恐れがあるのです。

アニサキスやシュードテラノーバによる食中毒の症状は次の通り。

  • 激しい腹痛、悪心、嘔吐、
  • 下痢、下腹部痛、腹膜炎症状
  • 血圧低下、呼吸不全、意識消失

まさに「死なないだけマシ」というくらいの地獄を見ますので、ホッケを生食する時はくれぐれも注意してください。

ホッケのアニサキス対策

第一に火を通して食べることです。アニサキス(シュードテラノーバ)は火を通せば死滅します。60℃で1分以上の加熱をすれば死滅するので、低温調理も選択できますね。

どうしてもホッケを生で食べたいなら、いったん「冷凍」しましょう。アニサキスおよびシュードテラノーバは「−20℃で24時間以上」冷凍することで死滅します。

そして大前提は、鮮度の良いホッケを買い求めましょう。ただしこの場合は100%安全ではないことを覚えておくべきです。アニサキスやシュードテラノーバは宿主が生きている間は内臓に寄生しますが、宿主の死後、時間とともに腹の膜を破って身の方へと侵入してしまいます。締めてからすぐのホッケなら内臓を取り除いてしまえば、ほぼアニサキス症の心配はありませんが、それも時間との勝負になるからです。

また、アニサキスやシュードテラノーバは目につきやすい生き物。焼いたり冷凍して死滅したからといって消え失せるわけではありません。焼き魚を食べてたら寄生虫を発見したという話はよく聞きます。いくら安全だといっても、魚のほぐし身からニョロっとしたやつが出てきたら最悪ですよね。

加えて、いったんアニサキス等に寄生された魚を食べた場合、アレルギー症状が起こる可能性もあります。食中毒症状に繋がる危険もあるので注意が必要。

アニサキスの対策については別の記事でも詳しく解説しています。シュードテラノーバの対策もアニサキスと同じ。

なお、ホッケの刺身にこだわる理由はないかもしれません。なぜかと言えばホッケはアイナメと同じで焼いて食べると非常に美味しい魚なので。

ホッケの干物も注意!

ホッケは干物に加工された状態のものを買い求めることが多いですが、その干物は安全なのでしょうか?寄生虫リスクはあるのでしょうか?

干物にすればアニサキスは死滅するとは言い切れません。一夜干しなどは特に、寄生虫が生き残っている可能性は少なからずあると思います。

干物でも基本的には食べる前に火を通しましょう

とはいえ、世に出回るホッケの干物はだいたいは安全だと思います。加工業者はプロなので鮮度管理や洗浄処理をきちんとやっているはず。見た目が悪ければ売り物になりませんからね。

大事なのは色んな可能性を考えるということかもしれません。加工品とはいえ生き物を食べることに変わりはなく、目の前の一匹を観察して考えを巡らすと良いと思います。

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