【鳴門骨(なるとぼね)は縁起物】鯛の骨にできた“こぶ”の話

鯛(真鯛)の鳴門骨(なるとぼね) 魚介の雑学

鳴門骨(なるとぼね)」とは、魚(主に鯛)にできたコブ状の硬い“しこり”のようなものを言います。

鯛、いわゆる真鯛(マダイ)を三枚におろす時、身の中の不自然に硬い“こぶ”に包丁が当たって、切り進めなくなることがあるのですが、骨の途中にできた「鳴門骨(なるとぼね)」が邪魔しているためです。

中骨(魚の体の真ん中を通っている骨)の一部が隆起したように、硬くて丸い”しこり”みたいなコブとなっているわけですが、なぜこんなことに??・・・原因は一体なんでしょうか?

”しこり”というより、”奇形化した骨”という表現の方が正しいかもしれません。病気ではなく、鳴門骨のある鯛は食べても問題ありません

しかし、中骨の一部が肥大化したかのようにしっかりと骨と一体化し、包丁で削ぎ落とすのはまず無理なレベルの硬いコブ。結局何なのコレ。

鳴門骨の存在こそ、鳴門海峡の厳しい海で育った天然物の真鯛の証拠だとも言われていて、養殖の真鯛には存在しないと言われているのですが・・・。

考えるほどに不思議な鯛の鳴門骨の原因に迫っていきます。

鯛の鳴門骨(なるとぼね)とは??

鳴門骨を知らない人は、ここまで記事を読み進めても「???」だと思いますので、さらに詳しく書きます。

ちなみに身を削ぎ落として骨だけ(中骨のみ)にした真鯛の画像がこちら。鳴門骨の存在がよく分かります。

こうして見るともはや骨の一部ですね。魚が病気になったわけではなく、疲労骨折の跡だとか強いストレスを受けたためだとか様々言われます。

生まれた時からあるかのようにガッチリ骨と一体化してますが、幼魚に鳴門骨はなく、成長とともに肥大化するようです。

2個できている個体もいます。

3個できた個体もいるとか・・・。一体どうしてこんなことになってしまうのでしょうか。

鳴門骨は「縁起物」

鳴門骨の原因が気になりますが、その前に衝撃の事実を発表。鯛が持つ不思議な鳴門骨、実は縁起物だとされているのです。

タイノエの記事でも触れていますが、「鯛の九つ道具」と呼ばれるマダイのパーツがあり、その一つとされているのです。

少なくない割合で遭遇する鳴門骨は幸運を呼ぶラッキーアイテムだったのですね。

「鯛の九つ道具」なので、チダイや他の魚ではなく、真鯛(マダイ)であることに意味があると思います。

鯛の九つ道具は次の通り。

  • 鯛石(たいせき)
  • 鯛中鯛(たいちゅうのたい)
  • 大龍(だいりゅう)
  • 鍬形(くわかた)
  • 三ツ道具(みつどうぐ)
  • 小龍(こりゅう)
  • 竹馬(ちくば)
  • 鳴門骨(なるとぼね)
  • 鯛之福玉(たいのふくだま)

鯛に鳴門骨ができる原因

鳴門骨の成り立ちは瀬戸内海の鳴門の急流に原因があるとされています。病気ではなく、鳴門骨ができた魚を食べても問題ありません

鳴門の海を泳ぐ真鯛は、急潮の為に骨が疲れて(あるいは骨折して)尻ビレ近くの血管棘が肥大化するという説で、名前に「鳴門」と付くのもそのためです。

簡単に言えば、鳴門の環境が厳しくて骨が変形してしまったという話なのですが・・・。

しかし、「他の産地で育った真鯛にも見られる」とか、「オーストラリア近海で獲られるゴウシュウマダイにも同様の特徴が見られる」とかいう話もあり、実は正確な原因がよく分かっていないというのが現状

養殖の真鯛には存在しないと言われますが、鳴門骨ができる原因が育った環境にあるのなら、養殖か天然かは実は関係なく、筆者は養殖のマダイでもよく鳴門骨と遭遇します。

それどころか、真鯛(マダイ)だけでなく、タイ科の別種である「チダイ」でも見たことありますし、タイ科以外の魚でも、似たようなコブに遭遇したことあります。でも圧倒的にマダイに多い気がします。

鳴門骨の確率

鳴門骨のある真鯛に出くわすのはレアケースと思う人もいるでしょう。

もちろん、真鯛は各地で漁獲され、正常な状態である(鳴門骨のない)個体がほとんどです。

しかし、筆者は何度も「鳴門骨マダイ」を目の当たりにしています。

九州あたりが産地である真鯛を捌くと、4〜5割くらいの確率で鳴門骨のできた個体と遭遇するような感覚でしょうか。季節は冬〜春に多い気がしています。

今まで見てきた範囲の中ではありますが、鳴門骨の特徴を思い浮かべると次の通りです。

  • 必ず「中骨の尻びれ付近」にある。
  • 大きさは様々。
  • 鳴門骨がある真鯛の年齢(大きさ)は様々だが、若魚の鳴門骨は小さい。
  • コブが2個連なっている個体もいる。
  • 少ないけど血鯛(チダイ)にもあった。

こうして特徴を上げてみると、少し不思議だと感じる点もあります。

鳴門骨の不思議

  • 「真鯛」に圧倒的に多い不思議
  • どの個体もコブができる場所が同じ不思議
  • 外見はいたって普通である不思議

他の魚種でも鳴門骨のようなコブを見たことがありますが、マダイに圧倒的に多い気がしています。鳴門の海は真鯛だけのテリトリーではないはずなのに、不自然ですよね。

加えて、鳴門骨を発見する体の場所がいつも同じ(尻びれ付近)というのも謎です。

あと、骨折するくらいなら、もうちょっと外見がくたびれていても良さそうな気がします。例えば尾ビレが穴だらけとか、片目に傷があるとか・・・。

外見はいたって健康で綺麗。

全て筆者が見た個体の範囲での話ですが、真鯛に多く、体の特定の部位でのみ、そして外見からは分からない点に違和感を感じます。

鳴門骨に関する情報を検索すると、「骨折したことによる骨の肥大化」との説明をたまに見かけますが、個人的な意見になりますが骨折とは違うのではないか?と思います。

先ほどの写真を見る通り、骨自体は不自然な曲がり方はしていないからです。しかも必ず同じ場所に鳴門骨はありました。疲労骨折であるなら、他の部位にも見られそうなものだと思うからです。

それと、観察して分かったのは、鳴門骨はまるっきり”骨”の感触でした。逆に他の骨との違いこそ見つけられず、成分は骨と同じだと思います。

鳴門骨ができた鯛の処理方法

鯛(真鯛)は本来、包丁でさばきやすい部類に入る魚です。

包丁で扱いやすい形してますし、ウロコも取りやすいですし。

しかし、「鳴門骨(なるとぼね)」には注意が必要で、既に書いたように包丁がそこで止まってしまい、綺麗に捌けませんし時間もロスします。

対処は、多少、身は削れてしまいますが、包丁の角度を変えながら、鳴門骨の突起をなぞるように切り進めるしかありません。

鳴門骨の存在を頭に入れておけば、少なくとも時間を無駄にすることはないでしょう。

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