マトウダイが“まずい”は間違い!魚の食べ方の鉄則

マトウダイ(マトダイ) 魚介の雑学

マトウダイは和食において比較的マイナー食材ですが、洋食では比較的メジャーな存在です。古くからレシピ本などでマトウダイを使った魚料理が紹介されてきました。つまり料理の食材として定番の魚ということ。

マトウダイを食べて“まずい”と思うのは根本的な魚食嫌いということでなければ、料理する工程で“間違い”があるからだと思います。

今回は美味しいマトウダイを食べるためのポイントを解説してみようと思います。

「解説」などと偉そうな事を言ってしまうと少し大げさで、簡単なコツのようなもの。「マトウダイって不味い魚なんだ」と思われると残念なのでイメージを払拭する助けになればと思います。

マトウダイを“まずい”と思うなら「食べ方」を見直して欲しい

マトウダイという多くの人にとってあまり聞き慣れないであろう魚は、まるで「顔」がそのまま泳いでいるかのような不思議な姿の食用魚。真横から見るとほぼ顔面魚、しかし正面を向くとペラペラ平べったいひょうきんな形が目を引くので水族館でもたまに見かけます。

フランス料理、イタリア料理、海外ではメジャーな食材のマトウダイ。

マトウダイの捌(さば)き方も紹介していますので良ければ覗いてみてください。

マトウダイの捌き方
マトウダイの捌き方を紹介しています。不思議な見た目の魚だけど基本は他の魚と同じ。

マトウダイは白身魚の中でもより淡白な部類の味。“まずい”と感じるなら食べ方(さらに言えば下処理)を見直すべきです。さらに鉄板の食べ方も紹介します。

前提として、「鮮度が良いマトウダイ」を準備すること。マトウダイに限らず魚を美味しくたべるためのコツは一にも二にもコレが最重要ポイントです。

その上で、これから紹介する食べ方では、ピチピチに限界まで鮮度の良いものでなくて大丈夫ですが、目の色や身のハリを観察して、できるだけ鮮度の良いマトウダイを入手する必要があります。

マトウダイは刺身じゃなく焼いて食べるべき魚

マトウダイは水分を多く含む魚で、刺身で食べるとしても、昆布締めなど工夫が必要になります。

白身魚の中でもより淡白な魚なので、マトウダイの刺身料理というのは筆者は正直聞いたことありません。

マトウダイに限らず、淡白で水分の多い魚は火を通すことで飛躍的に美味しくなるという法則があります。これは筆者が勝手に思ってるだけなので信じるかはどうかはあなた次第ですが。

水分の多い魚の下処理は、ピチットを使って味を凝縮すると良いです。

ただし、ピチットを使ったからと言って絶対に美味しくなるとは限りません。火を通した時、マトウダイに含まれる水分が身をふっくらさせる働きをするからです。

脱水しすぎてしまうとパサパサ感がでてしまうので、ピチットの使いすぎには注意が必要だと思います。ちなみにコレも筆者独自の考えです。経験でそう感じただけなので参考までに。

もっと具体的に、マトウダイの美味しい食べ方を解説していきます。

(あえて刺身なら「薄造り」にして食べるのがセオリーです。鮮度が良ければ刺身でも美味)

マトウダイを活かすなら「ムニエル」

マトウダイにはどんな料理が合うのか。

筆者がオススメするまでもありませんが、ムニエルに代表される、フライパンを使ったソテーが定番中の定番。

なぜマトウダイはソテーすると良いのか、次の理由があります。

  • マトウダイには、焼いた時いい感じの焼き汁が出る特徴がある。
  • 皮目に小麦粉をまぶしてソテーするとパリパリの食感を得られる。
  • 焼いた時こそ旨味が前面に出る魚である。

繰り返しますがマトウダイは身に水分を多く含む魚。

マダラのように、この水分が焼いた時に身の外に出て、味の良いソースを作ることができます。串で直火焼きとかだと、この焼き汁が落ちてしまって活かせません。だからフライパンを使って焼くのがおすすめなのです。

マトウダイの皮には絶妙な弾力があるので、焼いた時にほどよくサクッ!パリッ!となり驚くほど上品な仕上がりとなります。

さらに言えば、焼いた時の味の変化。

不思議なのですが、刺身で食べると淡白だと感じるのに、焼くと違う食材であるかのように変化するのがマトウダイなのです。

ここからは少し脱線して、マトウダイの豆知識も少し紹介していきます。

マトウダイ料理を囲む食卓などで披露してください。

「的(マト)鯛」と「馬頭(マトウ)鯛」

「マトウダイ」の名前は標準和名ですが、いくつか違う呼び名を持っています。

「マトダイ」という呼び方もあります。

名前の由来には諸説あり、「顔面が馬面(ウマヅラ)」だから「馬頭鯛(マトウダイ)」。

あるいは、「体の真ん中にある黒い斑点が的のようである」ことから、そのまま的鯛(マトダイ)であるとする説。

どちらも確かに「的」を得た説ですね。

ちなみに「馬面」というと「ウマヅラハギ」を思い浮かべますが、マトウダイとウマヅラハギは無関係なので気にしなくて大丈夫です。

2つの名前の由来に関する説は両方とも間違いではなく、そもそも地方によって魚の呼び名が異なることが多い日本では、同じ魚で複数の名前が存在するのは「あるある」です。

関東らへんでは「馬頭鯛(マトウダイ)」、和歌山方面では「的鯛(マトダイ)」と呼ぶ傾向が強いとか。

他の呼び名として「クルマダイツキノワツキ」などの地方名が存在し、いずれもマトウダイの強烈な見た目からの由来でしょう。

フレンチでは「サンピエール」

マトウダイはフランス料理でメジャー食材であると書きました。

フランスでは、「サンピエール」という名前で呼ばれるそうです。

これはキリスト教の十二使徒の一人「聖ペトロ」にちなんでいるとか。

由来は、聖ペトロがマトウダイの口の中から貢物のお金を取り出したとする伝承が元だそう。

話の中では、マトウダイの体の真ん中の黒い斑点は、聖ペトロの指紋に見立てられているそうです。

英語では「John dory(ジョン ドリー)」と呼ばれ、起源は分かっておらず人名であるかも謎だそうです。

「target perch(ターゲットパーチ)」という別の英語名も存在し、こちらは日本での「的鯛(的鯛)」という呼び名とほぼ同義でしょう。

マトウダイのユニークな捕食方法

マトウダイの面白い特徴を紹介します。

この魚が持つ厚い唇と斜め上を向いた口は機能的で、餌を捕らえる時に前にシュッと飛び出ます。

下の写真は、マトウダイと似た仲間でカガミダイという魚のものですが、口が飛び出ていますね。マトウダイも全く同じような口の構造をしています。

こちらはカガミダイ
マトウダイ(マトダイ)
こちらはマトウダイ(マトダイ)

さらに、マトウダイといえば馬鹿でかい背びれにも目を引きます。

死んでしまうと分かりづらいですが、棘状と呼ばれる背びれのトゲの部分が異様に長いという特徴を持っています。

その姿は全体的に見ると縦長であり泳ぎが速そうには見えません。むしろ、その場に止まる能力に長けていそうな形をしています。

マトウダイの獲物
マトウダイの獲物

割と大きめサイズの魚も捕食しています。

サンピエールの口の中から、お金ではなく獲物が原型を留めて出てきました。

獲物となる魚を追い回してチェイスするのではなく、目標にゆっくり近づき、素早く口を伸ばして吸い込んでしまうような捕食姿が目に浮かびます。

マトウダイは鉄板(フライパン)で焼くのがテッパン

刺身で食べるマトウダイも不味くはないですが、やはり焼いて食べてもらいたい。

マトウダイは火を通して美味しい魚なのです。それはフランス料理の「ムニエル」の代表的な食材であることも裏付けとなっているでしょう。

大昔から定着した調理法には、多くの人が納得した理屈があるように感じます。

そしてマトウダイに限らず、魚を食べる鉄則は「鮮度の良いもを選ぶこと」です。

あたりまえやんと思う人がほとんどでしょうけど、逆に言えば鮮度の良い魚を普通に調理すれば“まずい”ハズがないので、お店で調理済みの魚の料理を食べた時に「マズい」と感じたら、それは魚の鮮度に問題があった可能性は大いにあると思います。

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