「マトウダイ」の捌き方(さばきかた)を解説しつつ、料理の方向性を考えてみました。
まるで顔からヒレが生えてるような珍妙な見た目は、顔面がそのまま泳いでいるかのようなマトウダイ。こんなことを言っては怒られるかもしれませんが、控えめに言ってブサイクな魚です。
摩訶不思議な形の魚であろうと捌き方の基本は他の魚と同じ。細かいポイントではマトウダイならではの独特な捌き方もあるので詳しく解説していきます。
特に正面から見ると薄いマトウダイは、包丁の入れ方にコツが必要です。

マトウダイは食用として有名な魚でもあり、特に洋食の分野では「ムニエル」の材料として定番。いっぽう和食では、刺身でも食べられますが少しマイナーな存在と言わざるを得ません。
食材として一定の認知があるマトウダイも、他の魚と同様に3枚におろすのが一般的です。
マトウダイの捌き方(さばき方)
マトウダイの捌き方で気をつけるべきポイントは以下。
- 鱗は無いに等しいので取らない
- 長いヒレは最初に切っておく
- 体の周りの外殻部(硬い部分)に注意
- 捌き方は他の魚同様に三枚おろしで
だいたい他の魚と同じ要領で捌けますが、特有の注意点もあります。ちなみに、顔面魚のように不思議な形をしたこの魚、「マトウダイとはどんな魚か?」でも詳しく解説しています。

マトウダイの生食は、優しい味で食べやすし。ただ、やや淡白すぎて水分が多いと感じられる点で、火を通して食べた方が旨いとされる「焼きもの」向きの魚。筆者もあえて刺身で食べなくても良いかなという考えです。
捌き方は、普通に三枚おろしで大丈夫です。
料理の方向性はやはりムニエルに代表されるような、フライパンでソテーする料理が良いと思います。理由も後述します。
マトウダイならではの注意点を踏まえて「捌き方」を解説していきます。
極小のウロコは取らずに捌く
マトウダイは鱗を持ちます。しかし極小なので取らなくても大丈夫。ウロコ付きのままの切り身を焼いても食感は気になりません。
もし刺身でいただく場合は、ウロコのついた皮を引いて刺身に切り分けます。その際、細かいウロコが切り身に付着しないように注意する必要はあります。
マトウダイは小骨が少なく、3枚おろしは見た目ほど難しい作業ではありません。
最初にヒレをハサミで切る
マトウダイはヒレが長くて処理の邪魔なので、まずはじめにキッチンバサミで切ってしまいます(下写真の赤線部分)。

サイズが大きいマトウダイはヒレが太くて硬いため、キッチンバサミで断ち切るのは困難。その場合は出刃包丁で叩き切ってください。あるいは切るのを諦めてください(ヒレは必ず切らなくてはダメなわけではありません)。
肛門周辺の硬い外郭部の捌き方
マトウダイの特殊な体の構造として、背ビレ、尾ビレ、尻ビレ、腹ビレに沿って、体を縁取るように硬い骨が取り囲んでいます。
下の写真の赤丸部分は、触ってみればわかりますが、外郭のように硬い骨状の部位です。

普通の魚だと、肛門から包丁を入れて腹ビレの方向に切り進めて腹を開くのですが、マトウダイの場合は硬い外郭も一緒に切り落とす必要があります。
下の画像の赤線部分に真上から包丁を当て、上から包丁の持ち手と反対の手で包丁の背を強めに叩いて一気に断ち切ると良いです。

体の淵に切り込みを入れてから捌く
マトウダイの尻ビレと背ビレの部分(写真の赤い丸の中)に、よく見るとトゲトゲがあるので捌こうとすると包丁の邪魔になります。

トゲ部分の処理は簡単。トゲの内側の皮目に、包丁を立てながら切込み(スリット)を入れ、そのスリットをきっかけにして切りすすめ(三枚おろしに)て行けば良いです。
身が薄いので包丁の角度は重要ですが、そこまで神経質にならなくても意外とキレイに身と中骨を切り分けることが可能です。
背側にも、同様のトゲがありますので、腹側と同じように処理します。腹骨は他の魚と同じようにすき引きしてください。小骨はありません。
再三書いている通りマトウダイは普通に三枚おろしにしますが、サイズが大きければヒラメのように5枚おろしにしても良いでしょう。
以上、マトウダイを三枚におろす時のポイントでした。
マトウダイの食べ方は?
マトウダイにはどんな料理が合うのでしょう。食べ方は?
筆写がオススメするまでもなく、ムニエルに代表されるフライパンを使ったソテーが定番中の定番。
なぜマトウダイはソテーすると良いのか、次の理由があります。
- マトウダイには、焼いた時いい感じの焼き汁が出る特徴がある。
- 皮目に小麦粉をまぶしてソテーするとパリパリの食感を得られる。
- 焼いた時こそ旨味が前面に出る魚である。
マトウダイは身に水分を多く含む魚。マダラのように、この水分が焼いた時に身の外に出て、味の良いソースを作ることができます。
串に刺したりグリルなどで直火焼きした場合、この焼き汁が落ちてしまって活かせません。だからフライパンを使って焼くのがおすすめなのです。
それに、マトウダイの皮には絶妙な弾力があるので、焼いた時に程よくサクッ!パリッ!となり、とても上品な仕上がりとなる点も見逃せません。
さらに言えば、焼いた時の味の変化。刺身で食べると淡白だと感じるのに、焼くと違う食材であるかのように変化します。不思議な化学変化です。
古くから、ムニエルの食材でマトウダイが紹介されるのには理由があるのです。
マトウダイには「エンガワ」と呼ばれる部位があります。
エンガワというのは、ヒラメやウマヅラハギなどにもある身の部分で、「縁側」のような見た目から、そのままの名前で呼ばれます。
エンガワは、細かくて微妙なヒレの運動をすることができる魚が持つ、繊細な筋肉の部位。
刺身で食べるとコリコリとした食感を楽しめますし、焼いて食べても、食感は消えますが甘みが強くて非常に美味です。
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