シログチ(別名イシモチ)は、食材としてはややマイナーな存在の海水魚です。
釣りの対象として堤防などからも狙われる魚であり、「イシモチは旨い」と紹介する釣り人ブロガーもいるくらい釣り人からは好評価。
なぜ、食卓にもっと広く普及しないのか。
漁獲量が少ないのでしょうか?それとも高級な魚なのでしょうか?
イシモチの美味しい食べ方と共に考えてみました。
イシモチ(シログチ)の美味しい食べ方を紹介
イシモチは「まずい」のか?
そんなことはありません。
適切に処理したイシモチは美味しいです。特に、皮目を香ばしく焼くと非常に美味しい魚なのです。この特性を生かした料理にしていけば、間違うことはないでしょう。
イシモチはなぜまずいと言われる?
イシモチは鮮度落ちの非常に早い魚。白身魚の中でかなり早い方だと思います。
加えて、皮目が若干ヌルヌルとして独特の生臭さがあるのです。
また、イシモチは大衆魚の極みですから、「野締め」の状態で売られていることがほとんど。つまり、高級魚に比べると扱いが雑なのですね。
- 鮮度落ちが早い
- 皮目に臭みがある
- 野締めで売られていることがほとんど
3つの問題を解決すれば、本来の美味しいイシモチを食べることができるでしょう。
この後、具体的な食べ方と共に、問題解決のポイントも合わせて解説していきます。
食べ方(1):イシモチを刺身で
適切に処理されたイシモチは刺身でも美味。
鮮魚店では、「活け締め」の刺身用魚が売られていますが(マダイ、スズキ、ヒラメなど)、イシモチは野締めの状態で並べられていることが多い魚。
イシモチは高級魚ではありません。ブランド力がないため刺身用に売られていることは少ないという印象です。
イシモチを購入する時、刺身でも食べられるかを確認しましょう。鮮度落ちが早いので、刺身用でないものを生食すれば、「まずい」可能性は高いですし、食中毒の危険も高まります。
もしくは、「刺身用に買う」のは難しいけど、「釣って刺身にする」のは簡単な魚。良く釣れるからです(イシモチは堤防からでも船からでも釣れる魚)
釣ったイシモチを活け締めにし、鮮度の良い状態でおろした刺身は絶品です。臭みのある皮は引いて仕まえば問題ないでしょう。
また、皮目を炙ると、臭みのあった皮が驚くほど香ばしく美味に変わります。イシモチの皮は柔らかく、食感もとても上品です。
食べ方(2):イシモチを塩焼きで
野締めの状態で売られていることの多いイシモチは、焼いて食べましょう。
何と言っても火を通して食べるのがイシモチの本命の食べ方と言っても過言ではありません。
ウロコをとった後、体の表面を丁寧に洗い流すのはもちろんですが、多少の焦げ目がつくくらいにじっくり焼けば、生臭さが香ばしい風味に変わりますよ。
しかもイシモチの皮は薄いので、焼いた時の仕上がりが「繊細なパリパリ」状隣、高級感が増します。
水分を適度に含んだ身質は、焼くことでふっくらと柔らかく、もともと繊維っぽくないので口当たりがとても上品に感じられますよ。
「イシモチ」と別名「シログチ」の意味
ところで、「イシモチ」と言う名前の由来をご存知でしょうか。
これは頭のあたりに「石」みたいな骨がある(耳石[じせき]と言う)ためにこう呼ばれています。

大きさが分かりづらいので、スプーンと並べてみます。

結構小さいけど、頭を割ったりするときに引っかかるので、地味に邪魔な骨です。
イシモチは漢字で書くと「石持」となり、この石が呼び名の由来となっています。
さらに、この魚は浮き袋を使って“鳴く”という特徴をもちます。
前の記事で書いたホウボウと同じですよね。
シログチという標準和名も、グーグーと鳴く様子を「愚痴(グチ)」を言っているようだ。ってところからきているみたいです。
イシモチはなぜパッとしないのか?
「イシモチがまずい」なんてことは全然無く、むしろ非常に美味な魚であることは伝わったでしょうか。
しかし、いくつかの難点を加味しても、イシモチってパッとしないイメージが・・。
それはなぜでしょうか。考えてみました。
加工品の原料で消費されてしまう
イシモチは、昔から大衆魚の代表的な存在として人々に親しまれてきました。
記事の冒頭で「人気がない」と書きましたが、実は昔から皆に愛されてきた魚でもあったのです。
魚を食べる人が減ったことも影響してか、イシモチの人気が低迷しているのが現状のようです。
漁獲量の多いイシモチは、練り物製品の原材料としても重要な存在。
一般市場に流通しづらいのも、人気がないのではなく、加工品としての需要が多い為とも言えるのかもしれません。
イシモチの漁獲量が減っている?
中国や韓国では、イシモチが盛んに獲られており、特に韓国では、イシモチの塩漬けした干物が良く利用されるそうです。
韓国の人にとっては日本よりもメジャー食材なのかもしれません。
「他国の漁獲量増加と日本の漁獲量減少の関係」という話があります。
つまり、イシモチの分布が日本よりも多い中国や韓国で漁獲量が多くなると、日本で獲れる量は減ってしまうことがあるそう。
そもそも、漁獲量が減ったので、イシモチがさらにマイナーな存在になったという可能性はあるのかもしれません。
イシモチの見た目は残念?
イシモチの見た目に関して、美味しそう!ってならないのでは?と個人的には感じています。
体の“色”が、ちょっと安っぽい光沢に見えがち。青魚のような「金属のような光沢」ではなくて、どこかプラスチックのような。
見た目のインパクトに欠けているのかもしれません。
しかし、魚の味は見た目ではありません。
春から秋口にかけては旬の季節ですので、もしイシモチを入手するチャンスがあれば塩焼きで。鮮度とかの関係で難易度は高めですが刺身もぜひ。
安くて美味しい魚イシモチをぜひ。