ムール貝から生えてる毛(ひげ)みたいなやつって何?

ムール貝の足糸 魚介の雑学

ムール貝と聞くと“地中海”とか“ワイン蒸し”とかの単語が思い浮かんできて、フレンチやイタリアンなど洋食の代表的な食材というイメージでヨダレが出そうです。

日本では「イガイ」と呼ばれ、まさに意外なことに古くから海の幸として認知されてきた歴史があります。(※もともと日本に生息していたイガイは、海外より持ち込まれた同属のムール貝にほぼ取って代わられました。日本オリジナルの正真正銘の「イガイ」は今や珍しい存在です。)

ところで、さてムール貝を食べようか、という時に必ず発生する疑問があります。

それは「ムール貝からモジャモジャした毛(ひげ)みたいなものが出ているけど、これの取り方ってどうすれば良いの?」です。

今回はムール貝の下処理方法を紹介します。

ムール貝が持つモジャモジャの毛「足糸(そくし)」の取り方

ムール貝からニョキッと出た謎の草みたいな、“毛”や“ヒゲ”のようにモジャモジャしたやつ。

正体は「足糸(そくし)」と呼ばれる、ムール貝の体の一部です。そのため、多少引っ張っても取れません。

実は他の二枚貝、例えば有名なアサリにも足糸はあります。しかしアサリの場合は成長とともに無くなってしまいますが。

ムール貝の下処理方法(足糸の取り方)

ムール貝は岩に付着して暮らしています。

砂地にいるアサリなどの二枚貝は砂抜きが必要ですが、その点ムール貝に砂抜きは不要です(住む場所が岩場なので体内に砂を溜めない)。その上で、ムール貝の下処理方法を説明します。

  1. 水を張ったボールにムール貝を入れ3〜5分ほどおき、浮いてきたゴミなどを取り除く。
  2. 足糸を、貝の幅が広くなっている方へ、貝の口の隙間に沿って引っ張り取り除く
  3. 貝の表面に付着したゴミなどをタワシなどでこすり落とす。
  4. 最後にもう一度、水を張ったボールに入れて両手で揉むように洗ってザルに移す。

ムール貝のヒゲ、もとい足糸は、多少の引っ張りでは取れません。取り方のコツは、貝の口が開くほうに向かって隙間に沿って引っぱることです。うまく取れれば、上の写真のように身とつながっている部分が付いてきます。

殻には色々なものがこびり付いています。小さなフジツボ的な生き物が付いている場合も。タワシなどで擦り取りましょう。

以上で下処理は終わりです。すぐに使わない場合はジップロックに入れて冷凍保存もできますし、ワイン蒸しなどにそのまま利用することができます。

ムール貝の「足糸」の役割

ムール貝から出ている謎の毛(ひげ)のようなものは、食べかけの餌でも海の中のゴミでもなく、ちゃんとした体の一部です。

足糸の役割は、岩などに漂着するための「糸のような足」というわけです。ムール貝は岩にくっついて暮らしていて、潮の満ち引きなど流れに晒されるシーンが多いので、体を固定する機能が発達したのでしょう。

他の二枚貝も足糸を持っていますが、既出のアサリのように、砂地に暮らす貝は何かにヘバリつく必要がないので成長とともに消えてしまう種も多いです。

ムール貝は不要ですが、アサリに代表される二枚貝は砂抜きが必要。別記事で解説しています。

ムール貝の足糸の耐久性の秘密

ムール貝の足糸は強く、引っ張ってもなかなか取れなくて頑丈。その仕組みにはなにやら秘密が・・・。

ムール貝の仲間の「ミドリイガイ」についての興味深い研究が、東京工業大学のホームページに載せられていました。

いわく、ミドリイガイのゲノム情報を再構築することに成功したとのこと。足糸には、海中の微生物などによる分解作用への耐久性があり、そのメカニズムが少しづつ分かってきた。・・・らしいです。

同記事によると、そもそもミドリイガイは海洋汚染の指標生物なんだとか。イガイはマイクロプラスチックの粒子を体に蓄積しやすいので、汚染の影響を調べるためのモデルとして近年重要視されているのだそうです。

その上で、遺伝子解析から詳細が明らかになってきた、分解から防御する生体機能。その研究は今後、海中施設や船舶への貝類の付着防除対策の新たな手掛かりとなるかもしれない、と書かれています。

ムール貝を食べるために処理するモジャモジャの「足糸」。実は研究の最先端であることは筆者も知りませんでした。

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