【チダイ】漢字でどう書く？魚の名前の“あれこれ”

主に食用として利用される海のお魚「チダイ」は、美しい紅色と透き通った白身、控えめだけど淡白すぎない味わいを持っています。

比較的に安価ですし、近縁種には魚の王として君臨する「あの魚」。味がマズいはずはありません。「あの魚」と味も似てるし見た目も似てるので、チダイのほうが安価な分、お得感というか、隠れた狙い目というか、とにかくオススメの魚種なのです。

でもちょっと引っかかるのがその名前。カタカナで「チダイ」って書くと意味や漢字表記がいまいちピンと来ません。他の有名な呼び名とともに、チダイの名前に関する“あれこれ”を紐解いていきます。

チダイの味や食べ方は別の機会に紹介させていただくとして、今回は「名前」に注目してみました。

チダイの漢字は？別の呼び方や英語名を紹介。

チダイは漢字で「血鯛」と書きます。

「血の鯛」とは何だか不穏ですが、名前の由来は「鰓蓋（えらぶた）の縁のところが血が滲んだような濃い赤に染まっているから」との説が有力。

鰓蓋（えらぶた）というのは、魚の目の部分から少し後ろにあるエラに、蓋のようにかぶさっている箇所のことを言いますが、写真で見るとこんな感じ。

上の写真の赤印の部分が、パカパカと開閉して海の中で呼吸したりする仕組み。いわゆるエラ呼吸ですね。

ちょうど縦に赤く染まっていて、チダイの鰓蓋の縁（ふち）がまるで血が滲んだような見た目になっていますが、実際に流血している訳ではありません。

「“血”のようなエラ蓋」という話以外にも、「チダイ」の名の語源に関する話は存在し、それは「小さい鯛みたいな魚だから」というもの。

チダイの全長は最大で４０センチほどで他の近縁種と比べて小ぶりなので「ち（いさい）鯛みたいな魚」というわけですね。

チダイには別の呼び方が複数あり、「チコダイ」とも呼ばれます。上で紹介した「小さい鯛みたいな魚」の由来と同様に、体の小ささが「チコダイ」という名前の由来だとされています。

チダイのことを「チコダイ」と呼ぶ地域は、だいたい静岡県以南に多く、滋賀、広島、山口、鹿児島などの広い地域にわたっているようです。

なお、チダイの幼魚は「春子（カスゴ）」と呼ばれ、伝統的な寿司ネタとされます。

ついでに紹介すると、「ハナダイ（花鯛）」や「サクラダイ（桜鯛）」の名前で呼ぶ魚も、同じチダイのこと。

体の色も華やかですし、獲られる時期も早ければ春に重なるので、まさに縁起物ですね。

なお、同時期のマダイもやはり「桜鯛」と呼んで特別視され、同じ呼び名としてはおそらくこっちの方が有名。姿形だけでなく呼び名も同じって、ややこしすぎますね。

チダイの近縁種には超ビックネームが。

それは、同じタイ科の「マダイ」です。姿形が非常に似ていますが、チダイは「スズキ目スズキ亜目タイ科チダイ属」、マダイは「タイ科マダイ属」となります。

両者の違いについて気になる方は、チダイと真鯛の見分け方の記事を参照ください。

全魚類をして圧倒的な知名度と人気を誇るのがマダイ。それに比べてしまえば、チダイはマイナーな魚と言わざるを得ません。（マダイが居なければ、美味しくメジャーな魚と言えます）

同じタイ科の仲間には、他にもクロダイ、レンコダイ、キチヌ、ヘダイなどがいます。

桜鯛（チダイ）の英語名は「Crimson sea bream」。日本語で発音を書くと「クリムゾンシーブリーム」でしょうか。

マダイが「Red sea bream」ですから、それよりもさらに赤いニュアンスの言葉となり、和名「チダイ」と同じような語源です。

チダイとマダイの体全体の色味を比較すると、チダイはマダイよりも薄い赤色であることがほとんど。・・と言うことは、やはり「Crimson」はチダイの特徴である「エラ蓋の赤」を表現した言葉だと理解して、小さな感動を覚える筆者です。

姿形の似ている魚たちを見分けるのは、個体差や状態によって判別しづらい場合もあります。そんな時、魚が持つ唯一無二の特徴を覚えておけば役立つことが多いです。チダイのエラ蓋はタイ科の中で突出した特徴なので覚えておきましょう。

チダイの知識が役立ちそうな場面を一つ紹介。

結婚式などのおめでたい席でマダイが食材として使われるのは、ごく一般的な話ですが、見た目そっくりで、なおかつマダイよりも安価なチダイを使うケースがあります。そんな時にちょっとした知識を披露することができるでしょう。（決して式場側に文句を言ったりしてはいけません）

味が似ているにもかかわらず値の違う魚なので、両者を取り違えて扱うことがないように注意したいですね。

「腐っても鯛」ならぬ、「腐ってもタイ科」のチダイに注目です。