魚(クロソイ)を捌こうとしたら、お尻から白っぽい紐のようなものが出てたので調べてみました。
そもそもクロソイとはポピュラーな海水魚で、釣りに料理に・・・って、ん???

うーわお尻からなんか出てる何だこれ(; ゚д゚)
白くて・・、
平べったくて・・、
長い。
この形は、
まさか、「うどん」・・・・・?
いやいやいや!!
画像だと伝わりませんが、微妙に動いてて生きているような感じ。
そう、これは間違いなく「寄生虫」でしょう。
魚(クロソイ)のお尻の紐は「条虫」の一種か
クロソイのお尻から顔を出していた寄生虫の正体は?
形状から察するに、サナダムシ(条虫)の一種ではないかと・・・。「プレロセルコイド」と呼ばれる条虫(サナダムシ)の幼虫だと思われます。
条虫の幼虫・・・。
サナダムシと聞くとヒトや他の哺乳類の体内から出てきた何メートルもある平べったい姿を想像しますが、アイツらの仲間ってこと??
日本海裂頭条虫? or 広節裂頭条虫?
クロソイのお尻からヒョッコリこんにちは!してる寄生虫、条虫の一種であることはほぼ間違いないと思います。
中でも「日本海裂頭条虫(にほんかいれっとうじょうちゅう)」と「広節裂頭条虫(こうせつれっとうじょうちゅう)」が、魚に寄生する条虫としては有名(広節裂頭条虫は「ミゾサナダ」とも呼ぶ)。当該寄生虫はこのどちらかである可能性が高そうです。
“条虫”と言っても様々で、体内に入って100パーセントの確率で人を死に至らしめる種もおり、今回クロソイに付いていた条虫がどの種なのかとても興味深いところ。前述のように「日本海裂頭条虫」や「広節裂頭条虫(ミゾサナダ)」が有力ではあるものの、これらはサケやマスに寄生することで知られ淡水で活動する印象。決めてを欠きます。
いずれにしても画像はまだ条虫の幼虫(プレロセルコイド)の段階で、本来であればこのあと中間宿主である魚介類から、最終宿主の哺乳類へと移動するわけです。
魚の条虫は食中毒の恐れアリ?
魚に寄生する条虫の多くは、人間を最終宿主の一つとして活動しています。
日本海裂頭条虫や広節裂頭条虫は中間宿主である魚に寄生すると、筋肉内に移動します。つまり魚の身に潜伏するので、今回のように魚の肛門から顔を出しているのは珍しいのかもしれません。
条虫が潜む魚を生食することでヒトに寄生し、体内で成虫となります。
寄生されたヒトの症状は緩やかなこともあるそうで、下痢や腹痛、お腹の違和感など、他の寄生虫による食中毒に比べマイルドな印象を受けます。
予防方法は生食を避けること。川魚の生食が海水魚のそれよりリスクが高いとされる所以じゃないでしょうか。火を通せば死滅します。
芽殖孤虫(がしょくこちゅう)は危険度MAX!
今回取り上げている寄生虫とは違うと思いますが、致死率100パーセントの超危険な条虫にも触れておきましょう。
それは芽殖孤虫(がしょくこちゅう)。最終奥義みたいな名前が“いかにも”すぎて怖い・・・。
ヒトに寄生する人体寄生虫の1種。条虫綱擬葉目裂頭条虫科に属する扁形動物。成虫は同定されていないため、孤虫の名が付けられている。ヒトの体内に入ると、急速に分裂して全身に転移しながら増殖し、宿主を確実に死に至らしめるという、非常に危険な性質を持つ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%BD%E6%AE%96%E5%AD%A4%E8%99%AB
芽殖孤虫(がしょくこちゅう)がヒトの体内に入ると「芽殖孤虫症」を発症するのだそうです。
世界的に見て症例が極めて少なく、感染経路もまだ分かっていない症状で、日本での症例が一番多いという恐ろしい奇病。
謎の多い芽殖孤虫(がしょくこちゅう)は、最終宿主がどの生き物であるかすら未だ不明。なんて恐ろしいエピソードなのか。震え上がります。
不思議な名前の由来は、幼虫から植物の芽のように増えることから「芽殖(がしょく)」、最終宿主が判明していない(成虫がどの生き物からも発見されていない)から「孤虫(こちゅう)」。
今回のクロソイの寄生虫、まさか芽殖孤虫ではないだろうとは思うのですが、素人には全く判断できず。
もしかしたら超危険MAXな寄生虫だったのかも?
なお芽殖孤虫という生き物は、既に知られている生物の異常個体だとする説もあったそうですが、生きた個体のDNAを解析したところ、新種の生命体であることが分かったそうです。
恐ろしさとロマンは紙一重。
スズキのお尻からも紐

スズキのお尻からも、サナダムシ系であろう寄生虫が出てたので動画を撮影しました。
宿主であるスズキは死んでいるけど寄生虫はまだ生きているという映像。意外に思われるかもしれませんが、少なくともまな板に乗った段階で見つけた寄生虫の多くは、生きていたとしてもゆっくりとしか動きません。
条虫ではありませんが、アニサキスなど人体に影響ある他種の寄生虫も同様です。
魚に「条虫」は珍しい?
魚を日々取り扱っている筆者の感覚では、このタイプ(サナダムシ系)の寄生虫と、魚を処理していて遭遇するのは珍しいこと。
しかしサケやマスなどが主であるものの、魚に条虫が寄生していることは珍しいことではありませんし、人間に見える形で体外に顔を出すことが稀なのかもしれません。
有名な寄生虫といえばアニサキスで、これは食中毒に気をつけるべき寄生虫であり、ふだん気をつけているためか「サナダムシタイプ」より遭遇する確率は高め。
アニサキスと芽殖孤虫はそれぞれ全く別種の寄生虫で、2種ともヒトの体内に入ってしまうと成虫にはならず幼虫のまま人体へ悪影響を及ぼします。
なぜ成虫にならないかと言えば、人間が最終宿主ではないのです。(アニサキスはイルカやクジラなどの体内で成虫になり、芽殖孤虫は最終宿主となる生き物が判明していない)
本来は人間を宿主としない寄生虫が、人間の体内に入ると良くないことが起き、逆に、人間を最終宿主とする寄生虫は、人間の体内で共存しようとするものが多いです。
例えばタイノエという寄生虫は人間でなく魚類を宿主としますが、寄生された宿主がすぐに死ぬことはほとんどありません。共生関係に近く宿主を生かして栄養を拝借するスタイル。
宿主を殺してしまうより宿主の中で共生した方が、たくさん子孫を残せるので、種の存続という意味では理にかなっていると言えるかもしれません。
寄生虫がいたお魚、クロソイとは?
クロソイにいた寄生虫が滅多に見ないタイプだったので、テンション上がってしまいました。
もともとクロソイはどんな魚かを紹介しようと思っていましたが、長くなったので別記事「クロソイとはどんな魚?」に、クロソイの紹介をまとめました。

食材と寄生虫、両方の話題を取り扱うのはミスマッチかもしれません。しかし、人間が食べる食材は基本的に食物連鎖の中にあり、寄生虫と呼ばれるような生き物との関係も必然だと筆者は考えています。大事なのは、人体へ悪影響を及ぼす危険な食べ物に関する知識だと思いますので、今後も今回のような情報を発信していきたいと思います。
ただ、キモいのは事実。筆者も慣れてるとはいえ、キモいはキモいです。寄生虫の情報により不快な思いをさせてしまった場合はすみません。
ちなみに、クロソイの近縁種「マゾイ」との見分け方が激ムズだったので、マスターしたい人は「クロソイとマゾイの見分け方」記事も合わせてどうぞ。
最後に、クロソイやマゾイなどのソイ系、メバル系に多い寄生虫について。
筆者の経験では、ソイを捌いていてアニサキスを発見したことは一度もありません。しかし事例を調べるとゼロではないようです。多いのはリリアトレマ。身の中にゴマのような極小の卵状のもの(目には見える)はたまに見かけます。
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