ハチジョウアカムツ(八丈赤鯥)は南国系の食用魚で、いわゆる地魚とか低利用魚に分類される珍しい種類です。
名前に付く「ハチジョウ」とは、八丈島周辺の海域で多く見られるための由来。暖かい海に住み、非常に美味。
ところで、「ハチジョウアカムツ」という名前に関しては物議を醸します。それは「アカムツ」という名前は高級魚ノドグロの別の呼び名だから。ハチジョウアカムツと「のどぐろ」は親戚のような関係なのでしょうか?
どちらの魚も名前が「アカムツ」で見た目も似ています。違いは何でしょうか?
ハチジョウアカムツと「のどぐろ」の関係性について調べてみました。
アカムツ(のどぐろ)の偽物?【ハチジョウアカムツ】
アカムツ(のどぐろ)に似た魚のハチジョウアカムツ、実はアカムツの近縁種ではありません。
- ハチジョウアカムツは「フエダイ科ハマダイ属」
- アカムツ(のどぐろ)は「ホタルジャコ科アカムツ属」
見た目が似てますが、それぞれが別の科に属しています。
つまり、強引に例えるとしたら人間とサルくらい違うということ。
ハチジョウアカムツは「のどぐろ」の偽物ではない
しかし、ハチジョウアカムツを「高級魚たるアカムツの偽物でしょ?」と侮ってはいけません。
ハチジョウアカムツは高級魚になり得るほどポテンシャルの高い魚なのです。味良し、見栄え良しのハチジョウアカムツ 。
いっそ名前を「アカハマダイ」とかに変えて、アカムツ(のどぐろ)のイメージを切り離すと良いのではと個人的には感じます。
ハチジョウアカムツの近縁種にはハマダイ(オナガダイ、アカチビキ)という高級魚がいます。市場価値や知名度も高め。眷属たるハチジョウアカムツも似た特徴を持っているのですね。
しかし、ハチジョウアカムツは見た目も味も同属のハマダイに全く引けを取りませんが、認知度の面でやや劣ると言わざるを得ません。これに関しては「なぜ!」と声を大にして言いたいところ。
その理由、やはり名前のせいでは?と思ってしまいます。アカムツの偽物的な印象がどうしてもつきやすいネーミング。

ハチジョウアカムツの値段と旬の時期
本記事の写真に使用したハチジョウアカムツは、1キロ当たり700円という破格の値段で魚市場より入手したものです。
野締めのものですが刺身で食べれるほど鮮度は抜群。にも関わらず、高級魚とは思えない値段は残念・・・じゃなくて、ラッキー!
認知度の低さと漁獲量の少なさから、破格の値段で売られていることが多いのである意味「買いの魚」と言えるのがハチジョウアカムツ。何度も繰り返しますが、見た目も味も申し分なく知らない人に「幻の高級魚だよ」と紹介しても疑われないと思います。
なお、この魚は最大で1メートルにもなる大型の魚です。この手の魚は大型のものほど味が良く高値がつきます。大型の個体ならば高級魚として説得力も上がるでしょう。
また、旬の時期は分かっていません。本記事のハチジョウアカムツは6月に購入したもので、年間を通して味の良い魚であるとされています。
ハチジョウアカムツが「のどぐろ」の偽物ではなく、味も見た目も良い高級魚になり得る魚であることは散々紹介しましたので、以降はハチジョウアカムツの詳細情報にも触れていきます。
名前にある”ムツ”ってどんな意味?
アカムツの「ムツ」の意味は、「むっちりしている」や「脂っこい」ということ。
クロムツの記事でも書きましたが、身に脂がのっているので「ムツ」と呼ばれるわけです。
ちなみに、クロムツは「ムツ科」の魚。
クロムツ、アカムツ、ハチジョウアカムツの3匹、見た目は結構似ていますが、それぞれが全く仲間ではないという、不思議な関係性を持っています。
ハチジョウアカムツのことで言えば、他の2種と比べ「脂っこい」という印象はあまり無いです。
なお、沖縄ではハチジョウアカムツのことを「ヒーランマチ」という名前で呼ぶそう。
沖縄では「ムツ」全般のことを「マチ」と言います。
先ほど登場した近縁種のハマダイは「アカマチ」と呼ばれますし、アオダイは「ヒチューマチ」、ヒメダイは「グルクンマチ」など「ハマダイ科」の魚には数種の「マチ」が存在しています。
ちなみにハマダイは「沖縄三大高級魚」として知られています(他の2種はスジアラ(アカジンミーバイ)とシロクラベラ(マクブー))。
気候の違いから沖縄と本州では魚の価値も若干変わり、ハチジョウアカムツも温暖な海域に住む魚であることから、沖縄では本州よりも価値の高い魚かもしれません。
ハチジョウアカムツは深海魚
ハチジョウアカムツの目に注目。

目が大きいのは深海魚の特徴です。視界が悪いので「目」が発達するのです。赤い体色も深海性の魚に多い特徴。海の深さによる光の加減で、赤い色が保護色となるのです。


ハチジョウアカムツの食べ方

血合いが綺麗な白身の魚で、刺身にすると見た目も味も良いです。
生で食べて、上品で上質な旨味が感じられますし、焼いても煮ても間違いのないタイプでしょう。先ほど書いた通り、「ムツ」の名前の脂っこいという印象は弱め。
皮は硬いため、刺身を皮付きで食べる場合は皮を焼いたり湯引いたりすると良いかもしれません。
アカムツ(のどぐろ)に近くて遠い魚「ハチジョウアカムツ」は、その名前につられて泣く子も黙る超有名高級魚のことを連想してしまうかもしれません。
しかし、いったんアカムツ(のどぐろ)とは切り離して考えるべきです。
おそらく、産地では地魚として地域の人たちに愛されているのでは?今後、市場価値は上がっていくと思われる魚のひとつです。

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