クロムツとアカムツ(のどぐろ)の違いとは?

クロムツ 魚介の雑学

クロムツ」をご存知でしょうか?

深海性でサイズは60㎝〜70㎝ほどの中型サイズの魚で、冬に旬を迎える高級白身魚です。

クロムツの大きな目
目が白くなっていても鮮度が悪いとは限らないクロムツ

一方で、「アカムツ」なる魚もおり、クロとアカで親戚みたいなもの?と思う人は多いはず。

クロムツ同様にアカムツも高級魚で、“のどぐろ”の俗名を聞けばピンと来る人もいるでしょう。

クロムツとアカムツ(のどぐろ)。近縁種と思いきや、どうやら違うようです。両者の違いを整理をしつつ、美味しい食べ方も紹介していきます。

クロムツとアカムツ(のどぐろ)の違いとは?

クロムツの名前の由来は「脂っこい」からだと言われますが、実際のところ脂ギトギトではなく、しっとり舌触りの良い食感と甘味を生み出します。肉のものよりサラサラと繊細なのが魚脂の特徴。

アカムツも脂の美味しい魚でクロムツとの共通点と言えるでしょう。

では、両者の違いは?

クロムツとアカムツは「科」が違う

クロムツは「スズキ目スズキ亜目ムツ科」

対するアカムツは「ホタルジャコ科アカムツ属」に属します。

近縁種どころか、所属する「科」も違う遠く離れた存在!

意外なことに、生物学上クロムツの属する「スズキ目スズキ亜目ムツ科」には「ムツ属」1つの属のみで、しかもその中の種はクロムツを含め3種(4種とも)しかいません。

ムツ科に属する3種(4種)の中に、当然「アカムツ」も含まれると思うでしょうが、別名ノドグロで知られるアカムツは「ホタルジャコ科アカムツ属」で、クロムツとは全く縁もゆかりもないと言って良いほど。

名前が似ていることに加えて見た目もちょっと似ているので非常にややこしいです。

こうした誤解を生みやすい名前付けの背景には、大昔に見た目などの非学術的な要素で付けられた名前が、やがて学術的にも使われる“標準和名”の誕生へと繋がったという事情もあったと思います。

特に日本の場合、1種類の魚に対して地方名や出世魚などの通名や俗名が数多く存在するので、「クロムツ、アカムツ」問題に限らず、誤解を生む魚の名前はたくさんあるのです。

クロムツとノドグロ(アカムツ)、どっちが高い?

クロムツとノドグロ(アカムツ)はどちらも高級魚ですが、どっちの値段が高いでしょうか?

どちらも高級白身魚であることは揺るぎないですが、一般的には、アカムツの方がクロムツより高値の場合が多いです。

味は甲乙付けがし(・・だと筆者は思う)ですが、知名度と見栄えにおいてアカムツの方が抜きん出るといった印象です。需要が高いと言い換えても良いでしょう。

とは言え、魚の価値基準は様々。例えば漁獲の時期や産地、サイズ、鮮度。これらが変数となり、価値が逆転するケースは多くあります。

最高に良い状態のクロムツとアカムツが並んだとき、優劣をつけるのは無意味な気がします。

クロムツとアカムツは生息域が違う

クロムツの生息域は200〜500m。深海魚です。一方、アカムツは100m〜200mと深海性ではあるもののクロムツよりやや浅め。両者とも目が大きく、深く暗い海に住む魚の特徴を兼ね備えています。

クロムツはやや寒い地方で獲れる印象(岩手、宮城、伊豆など)。対するアカムツは西日本以南や日本海側(島根、長崎、千葉など)の印象。クロムツより微妙に南寄りです。

クロムツは秋から冬の産卵期に、成魚が水深100mほどの浅場まで移動して来る習性を持ちます。ここを狙って獲られるため冬が旬と言われます。ちなみにこの時期は「寒ムツ」と呼ばれて特別扱いされることも。

アカムツも寒い時期や春頃が旬だと思いますが、年間を通して特別扱いされる魚。そもそも年間の漁獲高が少なく、おいそれと欲しい時に簡単に注文できる魚ではありません。あえて言えば“出回った時が旬”です。

クロムツは全長1メートル近くまで成長する魚で大きい方が美味とされ値が張ります。一方でアカムツは最大でも40㎝前後なので、クロムツより一回り小さいサイズ感で、やはり大型のものほど高価。

クロムツの特徴と言えば、鋭い牙と真っ黒い口の中です。

クロムツ

これだけ見るとホラー感満載の魚ですね。

アカムツも別名「ノドグロ」が示すとおり、口の中は真っ黒。

クロムツの別名

クロムツやアカムツの名前は「むつっこい」や「むっちり」に由来しているとされています。「脂っこい」表現が「ムツ」となるわけですね。(確かに「むっちり」って現代の会話でもたまに聞くことありますよね)

名前の由来となった「脂っこい」とは、その身質のことを指します。刺身で食べるとダイレクトに良質の脂を堪能することができます。

ところで、魚は地方によって様々な呼ばれ方をされます。

アカムツの別名「ノドグロ」は本名よりも巷で通りそうですが、クロムツの別名はあるのでしょうか?

実はたくさんあって、筆者のお気に入りは「ロクノウオ」。

ロクノウオは仙台方面の呼び名。江戸時代の仙台藩領主「陸奥守(むつのかみ)」に対して同じ「むつ」という名前を使うことを遠慮し「むつ(六つ)→六(ろく)」に置き換えた為だそうです。

日本人らしい、奥ゆかしさを感じるエピソードで好きです。なお他にもムツメ、オキムツ、モツ、クジラトオシなど、多くの呼び名が存在するクロムツ。

クロムツとアカムツの食べ方

クロムツの美味しい食べ方。一番は刺身です。上質で繊細な脂が特徴であるクロムツのような魚は、刺身が最も美味しい食べ方です。

「脂」と聞くと肉々しいコッテリ感を想像しがちですが、魚の良質な脂というのはサラッと“しんなり”しているので、「脂っぽい」と感じることはあまりないと思います。

焼いて食べても美味しいですが、身に含まれる脂を味わうには刺身がベスト。ただし、「煮付け」も刺身同様にクロムツの調理方法としてはメジャーです。

刺身で食べるように、身に含まれる脂を感じることは少ないですが、ふっくらホロホロの身は口当たりがよく出汁も上質なので、刺身に負けずオススメできる食べ方です。

アカムツ(ノドグロ)の食べ方も、クロムツと同様の方向性だと思います。やはり脂が美味なので刺身で絶品ですし、煮物から焼き物までどう食べても美味しい魚です。

妊婦さんは「クロムツの食べ過ぎ」に注意!?

クロムツの体内には微量の水銀が含まれており、食べる時には注意する必要があります。

具体的に言うとクロムツの身は1週間に160gまで。という目安があるそうです。

水銀と聞くと怖いですよね。

食材による中毒系の話は、軽症でも意外と世に多く存在するものです。

どんな食べ物でも「食べ過ぎは良くない」ことを覚えておきましょう。

クロムツには、体に良い物質(DHAなどの抗酸化作用のある物質)も含まれているので、「絶対に食べちゃダメ」ということではなく、適量ならむしろ積極的に食べたほうが良いようです。

ただし、妊婦さんは注意した方が良いではないでしょうか。

水銀は特に胎児への影響が強いらしいです。妊娠したかな?と思った段階から、クロムツの摂取は控えた方が良いと言われています。

クロムツとアカムツは近縁種ではない!

クロムツとアカムツは名前が似ているだけでなく、見た目も近縁種っぽい雰囲気あるし、さらにどちらも高級魚なので両者が近縁種だと勘違いしている人は多いでしょう。

しかし、クロムツとアカムツはそれぞれ異なる科に属する遠縁の魚。

両者の名前に含まれる「ムツ」の言葉の意味は「むっちりしている」、つまり脂っこいという意味でした。

両者、刺身や煮付けで美味しいという特徴までも共通していますが、違いをしっかり抑えておきたいところですね。

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