【イカの体の仕組み】調べてみたら海の忍者がいろいろとトリッキーすぎた

スルメイカ 魚介の雑学

「海の忍者」などと呼ばれることもある“イカ”。体の構造、仕組みを調べてみたらなかなかトリッキーでした。“忍者”の呼び名も納得です。今回は食材としてイカを解体したついでに面白い構造と仕組みを紹介していきます。

サンプルで取り上げるのはスルメイカですが、イカの体の構造はだいたい同じなのでヤリイカ、スミイカ、その他のイカでもだいたい参考になると思います。

さすが忍者と呼ばれるだけあって、イカの体は他の魚介類と比べだいぶ様相が異なります。ひょっとしたらルーツは異星人かとさえ思ってしまうような生き物ですが、海は多様性に溢れているなぁぐらいに考えておけば大丈夫です。

目や口があって、内臓があって、魚のヒレのようなエンペラがあって・・・。形はまるで違うけど、生きるための基本的な機能は魚もイカもだいたい同じです。

【イカの構造】面白い体の仕組みを紹介

イカと呼ばれる生き物は生物学的には「軟体動物門頭足綱十腕形上目」に属し、「頭足類」や「軟体動物」などとも呼ばれます。

タコや絶滅したアンモナイトも、そもそもはイカの仲間です。

「イカ」という言葉の由来は、頭が角張って見えるため「厳(いかめ)しい」、あるいは「厳(いか)つい」の言葉が語源とされる説や、昔の言葉で「白くて堅い」という意味があったとする説など、諸説ありの状況。

イカを漢字で書くと「烏賊」が代表的で、意味はイカが鳥を捕まえて食べたとする中国の伝説を元にした当て字です。

・・と、サラッとイカに関する豆知識を軽く紹介しつつ、本題であるイカの下処理や体の構造を解説していきます。

イカの“漏斗(ろうと)”の役割【斬新】

イカの体には「漏斗(ろうと)」と呼ばれるホースの先端のような部位が付いています。下の写真の赤丸の部分。

スルメイカの漏斗
スルメイカの漏斗

一見すると口のように見えますが違います。漏斗の役割は海水を吐き出してロケット噴射のような原理で前に進むためのもの

「漏斗」は“じょうご”とも読みます。口の小さな瓶(ワインの瓶)などに液体を注ぎやすくする調理器具も同じ名称で呼ばれますよね(実験器具もしかり)。イカの漏斗(ろうと)も調理器具や実験器具と形はほぼ一緒で、出口が入り口(漏斗の付け根)より細くなり、吐き出される液体に勢いがつく構造になっています。

さらに興味深いのが、吐き出し口の向きを調整することにより前進だけでなく後進もできること。海の忍者というよりジェット機みたいですね。

また、イカの墨吹きは有名な行為ですが、墨を吹くのも“漏斗(ろうと)”が使われます。後述しますが、イカは体の中に墨の入った袋を持っていて、外敵から逃れるために漏斗(ろうと)から墨を吐き出すのです。

なお、漏斗は食事には使われません。イカは「口」を別に持っていて漏斗から摂食はしません。

イカに「毒袋」はあるの?

イカに毒袋はありません。

「毒袋」といえば、一般的には毒蛇などが持つ器官のことを言います。

例えばフグも体に毒を持ち、毒袋という言葉が使われるケースがあります。しかしフグはヘビと違い、毒のための器官を特別に持つわけではなく、他の魚も持つ臓器の一部にフグ特有の毒が含まれているだけのこと(その毒が強力なのですが)。

イカの場合、「墨袋」という臓器を持ち、これが毒袋と勘違いされるのかもしれません。

確認のため、実際に体の中を見てみましょう。

イカの胴体の部分を外套(がいとう)と呼びます。人間が寒い時に着る外套みたいだからだそう。

まるでコートを脱ぐように、イカの外套の外し方は簡単。

スルメイカの外套
スルメイカの外套

外套を外すと、内臓、呼吸をするエラなど大事な器官が剥き出しに。

ちなみに、外套から取り込んだ海水を漏斗から吐き出すという仕組みになっています。

外套の中に入っているのが肝と墨袋で、これら臓器類は塩辛や墨煮などに使われる部位で有名。

墨袋は、破ってしまうと想像以上に周りの全てを真っ黒にしてしまうぼでご注意を。ただし無毒で、しばしば料理にも使われます。

スルメイカの肝と墨袋
スルメイカの肝と墨袋

墨袋は肝を覆っている膜に張り付いていますが、下の写真のように指で引っ張って剥がします。

イカに毒袋はありません。

墨袋とは別に内臓に猛毒の部位があるとの噂も一部ありますが、たぶん「精莢」と混同した勘違いかと思います。「精莢(せいきょう)」についてはこのあと解説します。

イカの毒性(精莢に注意)

イカの精莢(せいきょう)には要注意です。

精莢とは簡単に言えば生殖器官のことで、例えるなら極小のミサイルのようなもの。

イカのオスは精莢ミサイルをメスに打ち込んで生殖を行います。

「精莢ミサイル」は冗談で、精莢はいわばカプセルの中に精子を封入する構造になっています。

種類により数や大きさも異なりますが、1匹のオスあたり約100個の精莢を持っているとのこと。

イカのオスの内臓には精莢が入っている部分があり、これを生食するとチクチクとした刺激感に襲われ、しかも精莢は極小なので、取り除くのに口腔外科へ行かないと治らない場合もあるそうです。

なお、精莢とは関係なく、イカには筋肉に猛毒を持つ種類もいます。(「ミナミハナイカ」という名前らしい)

ただし、日本で食用とされるイカには猛毒はありませんのでとりあえず安心して良いでしょう。

イカの「触腕」に毒があるとの噂がありますが、これも誤り。

しかし、触腕に付いた吸盤は大きくて硬いので美味しくありません。

雑菌も多いとされ、触腕は切り落として捨てる人は多いです。

生食ではなく火を通すのであれば、触腕を食べても問題ありませんが、吸盤は取り除いたほうが良いでしょう。

イカの足は何本??

イカの腕は、世間では「足」と言われるほうが多いですが、使い方や機能から分類すると「腕」が正解です。

さらにその本数。イカの腕は8本です。

「10本じゃないの?」と思いきや、外側の長くて太い2本は「触腕」と呼ばれ、他の8本と分けて考えるのが正解となります。

スルメイカの腕
スルメイカの腕

触腕は、獲物を捕まえる時などに使われる長くて大きめの腕です。吸盤も他に比べ大きく、腕の先端は木の葉のような形をしています。

触腕に毒はありませんが、普通は生食はしません。割と硬くて口に当たります。

スルメイカの触腕
スルメイカの触腕

吸盤に注目すると、先端にはネジ部品のパッキンとかワッシャーのような、硬めの輪っかがついており、吸着力を強めています。

もしイカが死も、触腕の吸盤はまだ機能することに驚くでしょう。人間の手や包丁、なんにでもくっついて離れません。

イカに謎の“プラスチックみたいなもの”の正体

イカの外套を外すと、裏に人工的なプラスチックのパーツのようなものが張り付いています。

スルメイカの軟骨
スルメイカの軟骨

このプラスチック状の棒は軟骨で、貝殻の退化したもの。「イカの甲」とも呼ばれ、「イカの甲より年の功」という言い回しを聞いたことある人もいるのでは。

太古の昔、イカの祖先のアンモナイトなどの生物はカタツムリのような貝殻を背負っていました。

写真のものは貧弱ですが、「コウイカ」は貝殻のようにハッキリとした固形物です。

イカのクチバシは「カラストンビ」

イカの口は顎板(がくばん)と呼ばれ、俗称として「クチバシ」や「カラストンビ」などとも呼ばれます。

腕の付け根の真ん中に口があります。

下の画像で真ん中の黒くなっているところが口です。

この口をもう少し細かく見ていきましょう。

顎板(がくばん)は上顎と下顎に別れ、簡単に言えば上顎と下顎を噛み合わせるような動作で餌を食べるのです。

このことにより、人間と同じように大きな食べ物を噛み切ることができ、腕も合わせて使えば、大きな獲物も捕食することが可能となっています。

スルメイカのクチバシ
スルメイカのクチバシ

まるで鳥のクチバシですね。

下の写真は別の角度から

「カラストンビ」は上顎を「カラス」、下顎を「トンビ」といった具合で使われる俗称。

上下の顎を詳しく見ると形がそれぞれ異なっているので、「カラス・トンビ」と呼ばれます。

イカのエンペラとは?

イカの頭の矢印みたいな部位を「エンペラ」と呼びます。

「ミミ」と呼ぶ人もいますが、エンペラが一般的でしょう。

スルメイカのエンペラ
スルメイカのエンペラ
エンペラの裏側

エンペラは「鰭(ヒレ)」のことで、その役割は魚類の持つ「鰭(ヒレ)」と同じ。

つまり泳いでいる時に体を安定させたり、細かい方向転換をしたりする役目。

実際に泳いでいるところを見るとウネウネと波打つような動作をしているので一目瞭然です。

ゆっくり移動する時の推進器官としての役目もあるようです。

なお、なぜ「エンペラ」って呼ばれるの?と気になりますが、「エンペラー(皇帝)」から来ているという説が有力で、皇帝つまりナポレオンの帽子に形が似ているからだとの理由だそうです。(諸説あり)

イカの目はちゃんと見えるのか?

イカには白目と黒目があり、人間の目の構造に似ています。

スルメイカの目
スルメイカの目

軟体動物の中では最も視力が良いとされています。

スルメイカの場合は目が薄い膜で覆われています。

イカの生食は寄生虫にも注意

スルメイカをはじめとした食用のイカには、寄生虫がついていることがあります。

スルメイカの寄生虫(アニサキスやニベリニア)に注意してください。

特にアニサキスは食中毒のリスクがありますので要注意です。

スルメイカの寄生虫は危険?【アニサキスとニベリニア】
スルメイカは、寄生虫「アニサキス」と「ニベリニア」に注意しよう!最悪の場合、食中毒のリスクも・・!

ちなみに「ニベリニア」の方は、人体には無害なれど目視できるほどの大きさで不快なので、除去しましょう。擦ったり摘めば簡単に取り除けます。

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