【アカイシモドキ】アカイシガニの偽物?地味にウマい“地蟹”

アカイシモドキ 魚介の雑学

アカイシモドキ」という名前の蟹(カニ)をご存知でしょうか。海産物のひとつで食用とされる蟹です。

アカイシ”モドキ”という名前は、そもそも「アカイシガニ」という本家のカニのニセモノ的存在、つまり「モドキ」という、なんとも哀れなネーミングを持つカニなのです。

本家であるアカイシガニでさえ知られざる存在ですが、今回はその偽物の話。

毛ガニなどのカニ界の超メジャー選手ではなく、あえて知る人ぞ知る「アカイシモドキ」について、食べた感想や、そもそもアカイシモドキがどんな生き物なのか、調べてみました。

アカイシモドキとは?

「アカイシガニ」ではなく「アカイシモドキ」。

アカイシモドキは「エビ目エビ亜目カニ下目ワタリガニ科イシガニ属」の一種。

簡単に言えば、甲殻類で一般的なカニ (蟹)の仲間です。

まず食材としてそもそもアリなのか?というところから確認していきましょう。

「アカイシガニ」と「アカイシモドキ」

アカイシガニとアカイシモドキは同じイシガニ属の近縁種。見た目の違いはほとんどありませんが、アカイシガニは体表に細かい毛が生え、アカイシモドキは逆にツルツルなのが特徴。

同じ仲間である「イシガニ」の赤色バージョンが「アカイシガニ」で、さらにその「アカイシガニ」に似ているのが、今回紹介している「アカイシモドキ」といった関係性でしょうか。

アカイシモドキは市場にあまり流通しないカニで、近所のスーパーマーケットなどで見かけることはまずありません。ほとんどが産地でのみ消費されるような、地魚ならぬ地蟹的な存在です。

アカイシモドキの味は?

成人男性の手の平くらいの大きさで可食部分は決して多くはないアカイシモドキ。

手足よりむしろ甲羅側に食べどころがあり、カニ味噌も意外としっかり持ってます(個体差あるかもしれませんが)。

味は?というと、甘みがあってかなり美味しい蟹でした!!食感も、身が少ないかわりに繊維が細かく上品な印象を受けました。

「アカイシガニやアカイシモドキは臭い」という話をたまに聞きますが、そんなことはありません。少なくとも筆者の手元にあるアカイシモドキは臭くはなかったです。鮮度落ちが早くなると悪臭を放つのは魚介類先般に言えることなので、アカイシガニやアカイシモドキに限った話ではないように思います。

それにしても世の中まだまだ美味しいものってあるものですね。

甲殻類といえば出汁も捨てがたい。アカイシモドキも例に漏れず、甲羅を割って出汁をとり味噌汁でいただくと最高でした。食べどころが少ないカニは粗めに潰して丸ごと汁物にすると良いですよ。

”玉子カニ”は根強い人気を持つ珍味

アカイシモドキは食材としてはマイナーで本家(?)のアカイシガニも同様です。

しかし、「玉子カニ」という珍味は別。

玉子カニとは、小ぶりの「アカイシガニ」がそのままカリカリになった、おつまみに最適な乾き物です。

丸ごと食べることができて、いかにもカルシウム豊富そう。

アカイシガニと変わらない美味しさを持つアカイシモドキでも、一口サイズのものを使えば、玉子カニ”モドキ”を作れるかもしれません。

生物学から見るアカイシモドキ

ところで、アカイシガニをよく見ると後ろ足が特徴的です(下の写真の赤丸部分)。

「明らかに前の足と形が違うけど、カニってこんな感じだっけ?・・・」

・・・と思って調べたところ、これは「ワタリガニ科」に属するカニ達の特徴のよう。

「ワタリガニ科」の代表的なカニである「ガザミ(別名ワタリガニ)」は、長い距離を移動する(泳ぐ)特徴があり、この「アカイシモドキ」の後ろ足の特徴はまさに、泳ぐための形なのです!

泳ぐカニ。なかなかイメージしずらいですが、「遊泳脚」とよばれるこの足を使ってぎこちなく泳ぐ姿が、まさに「ワタリガニ」の名前の由来となったのでしょう。エビともカニとも言えない「シャコ」も遊泳脚を持ちます。

ついでに書くと、カニは「十脚目(エビ目)」という生物学上の分類に属し、その名の通り「足」が10本ということ。つまりカニのハサミは「手」じゃなくて「足」が進化した形なのだそうです。

蟹(カニ)の甲羅はなぜ硬い?

素朴な疑問ですが、カニの甲羅が硬いのはなぜ?って思ったことはないでしょうか。

物理的な攻撃から身を守るため。という答えでは少し説明不足です。

実は、海の中に存在する、おびただしい数の細菌から身を守ることが重要な役割だそうですよ。

考えてみれば、海の中では様々なミクロな生物がいて、それらは体にしょっちゅう触れてしまいます。

中には、タンパク質を分解したりするような細菌もいるので、カニの甲羅はそういった脅威から身を守るのにも必要というわけですね。

それにしても、人間と同じ遺伝子を持っているのに、硬い殻に覆われているのは、よくよく考えるとちょっと不思議です。

カニの甲羅は、傷がついたり割れたりすると命取り。時間が経てば修復しますが、傷から細菌が入り込んで病気になってしまいます。

足の長いカニの種は、海底の岩などで自らの体を傷つけまいとした進化の結果、との説もあるんだとか。その説によれば、足の先の爪が細く硬いのも、同じ理由だそうですよ。

人間にも、爪とか硬い部分はありますよね。生きていく上で必要であれば、人間の皮膚が硬くなるという進化の可能性もあったのかもしれませんね。

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