茶室における茶花とは
みなさん、こんにちは。
この茶道講座は、茶道や日本文化に関心がある、茶道を始めたばかりでいろいろ知りたいといった入門者に向けた講座です。一緒に茶道を学んでいきましょう。
今回は茶室における茶花の役割についてお話しします。さらに、秋を彩るお花もこの後で紹介します。
茶室は簡単にいうと、懐石料理や薄茶、濃茶をいただく場所です。
その茶室に欠かせないのが、「軸」と「花」なのです。畳はなくとも軸と花はある。それくらいに重要なものなのです。
ここからがポイントです。茶室の中で使われる数々のしつらえ・道具のなかで「花」はどれとも異質なのです。
茶碗、棗、茶筅、釜、風炉先、軸・・・・・これらがどんなに由緒があって価値のあるものを使っても、今この瞬間を生きて命を費やす「花」には及ばない、と考えるのが茶人です。
例えば、遥か昔、安土桃山時代の武将が所有していた茶碗・・・・長い年月を経て、多くの人の手を渡り歩いて割れることなく欠けることなくこの令和時代まで残っている、ということも大変な価値をもつことです。それは間違いありません。
ただ、一方で「花」は、野から摘まれた瞬間から命を削っているのです。そのまま土に生えたままであればもっと長く生きられたものを、人間の都合で命のピークを迎えさせられるのです。
したがって、茶室に入ったとき(「席入り」といいます)に、まず「軸」と「花」に深く感謝をするのです。
茶室に飾られる茶花はなんでもいいの?
茶花には、次のようなものが望ましいといわれています。
- 和名のあるもの
- トゲのないもの
- 香りが強くないもの
- 季節に合うもの
これらは絶対に守らなければいけない、というものでもなくて、その時の茶会のテーマ・主旨、どういった方たちを招いているかなどでも変化します。
海外の方を招いた際に、その国に関係する花を使おうとするとどうしても和名がない、なんてこともあるでしょうし、春先には香りのよい蝋梅をつかうこともあります。
大事なことは、その茶室にいる方たちが不快な思いをしない、ということではないでしょうか。
秋の茶花にはなにがあるの?
秋の茶花にはどんなものがあるのでしょうか。
和名があって、とげがなく、季節に合った花・・・・として有名なのが「秋の七草」です。
- ハギ
- ススキ
- クズ
- カワラナデシコ
- オミナエシ
- フジバカマ
- キキョウ
これらは野草としても生えているのが多く、季節を感じられてもってこいです。
他には、キク、リンドウ、カエデ、モミジ、秋海棠(シュウカイドウ)、コスモス(和名:秋桜)など。
キンモクセイやヒガンバナも秋を代表する花ですが、香りが強かったり、死を連想させるという意味であまり茶花として使われることはありません。ですが、絶対に使われないということもないです。
お稽古や茶会の時期にちょうど咲いている草花を使うのがよいと思います。
ただ、まだ咲いているからといって、秋に夏を代表するヒマワリを飾ったり、冬を代表するツバキを飾るのには注意が必要です。ヒマワリであれば夏の終わりかけ、ツバキであれば開炉を過ぎたときに使うのがいいのではないでしょうか。
茶懐石では、旬の先取り、盛り、終わりかけのものを上手く取り合わせる手法があります。時期や気候に合わせた茶花選びは一見難しく感じるかもしれませんが、外へ出かけたときに植物をじっと観察するようになったり、草花の名前を覚えたりと楽しみのほうがずっと多いです。
せっかくですから、あまりやったことのないことでも楽しんでやっていきましょう!